世の中、親子兄弟の間でも、何らかのきっかけで数十年にわたって消息が不明になるという話は意外と耳にします。
それでも普段は問題なく生活していても、いざ相続が発生すると、これが困ることになるのです。
まず前提として、相続人が行方不明な場合、行方不明者以外の相続人だけで遺産分割の合意を行うことはできません。
遺産分割の合意は相続人全員で行う必要があり、遺産分割協議書に相続人全員の署名捺印がないと、銀行でも法務局でも、手続を行ってはくれません。
従って、行方不明者がいる場合は、まずは住民票をたどって本人の生死を確かめる必要があります。
それでも生死が不明で行方が掴めない場合はどうするかというと、主に2つの対処方法があります。
1つは、わかる相続本サイトでご紹介した、不在者財産管理人を選任する方法です。
この方法がある意味王道なのですが、不在者財産管理人は、遺産分割が終わってからも不在者が戻ってくるまで財産の管理を続ける必要があります。
また、不在者財産管理人が遺産分割の合意を行う際には裁判所の許可が必要であり、かつ裁判所は不在者に不利な内容で合意を行うことを許可しないなど、制約があります。
そこで、もう1つの方法である、失踪宣告を利用する方法をご紹介します。
7年以上生死が不明な不在者がいる場合、失踪宣告を裁判所に申し立てることができます。(災害等で行方不明となった方は1年ですが、例外的場合なので説明は省略します。)
不在者について失踪宣告がなされた場合、その人は死亡したものとみなされます。死亡時については、失踪から7年が経過したときとなります。
失踪宣告を行うメリットは、上記のような不在者財産管理人制度の煩わしさがないことです。
なお、万が一不在者が戻ってきたとしても、既に行った遺産分割が無効になるわけではありません。
上記のいずれの方法をとるにせよ、数ヶ月の時間を必要としますので、弁護士に相談の上、計画的に進めて下さい。
【関連する本サイトの記事】
9−1−6相続人が行方不明の場合