東京西法律事務所

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2016年12月27日火曜日

セミナー講師を務めました

うっかり当ブログでの事前告知を忘れてしまいましたが、12月24日(土)のクリスマスイブの日に、横浜市能見台地域ケアプラザにて開催された任意後見に関するセミナーの講師を務めさせて頂きました。

今回は、全5回シリーズの第2回目のセミナーの講師としてお呼び頂き、成年後見と相続についてお話させて頂きました。

成年後見と相続の両方のテーマにまたがってお話をさせて頂くのは、私としても初めての試みだったのですが、今回は多めに時間を頂戴したため(75分間)、少し欲張ってお話をさせて頂くことができました。

30名程度の方にご参加頂き、クイズなどを交えながら、なるべくわかりやすい話を心がけてお話をさせて頂きました。

セミナー後のアンケートでは、わかりやすかったとお答え頂いた方が多く、安心しましたが、任意後見についてもう少し実例を加えて話して欲しいとのご要望もあり、今後はより一層の改良を加えて行きたいと考えております。

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。皆様のお役に立てれば幸いです。


2016年12月19日月曜日

実務に大激震! 預貯金の相続に関する判例変更について(速報)

本日(12月19日)、預貯金は(相続人間の合意の有無に関わらず)遺産分割の対象となるとの最高裁大法廷の決定がなされました。

決定全文はこちら↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf


この判例変更は、予想されていたことではありますが、相続の実務に携わる者の1人として、一言コメントせずに一日を終えることはできないと感じられるほど、インパクトが大きいものです。

従来の判例の内容や、前提となる話は、以前、本ブログや弁護士ドットコムニュースさんに寄稿させて頂いた記事で触れておりますので、こちらをご覧いただければと思います。

http://wakarusouzoku.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html

https://www.bengo4.com/c_4/c_1050/n_4543/

本稿では、決定文を踏まえ、判例変更が実務に与える影響について、以下具体的に考察したいと思います。

なお、あくまで速報ベースであるため、理由が簡潔なものとなることはご了承ください。

①預貯金以外の債権が遺産分割の対象となるか(判例の射程)
[結論] 否定
[理由] 指名債権など、預貯金以外の金銭債権が遺産分割の対象となるかについて、本決定は明確に述べておりません。

しかしながら、本判決の判決理由では、実務上、預貯金が相続人の合意のもとで遺産分割の対象とされていること、(従来から遺産分割の対象とされて来た)現金と余り変わらないものとして一般に認識されていること、預貯金を遺産分割の対象とすることが相続人間の調整に資することなど、預貯金特有の理由を挙げていることからすると、預貯金以外の債権については、従来と同様、遺産分割の対象にならない可能性が高いものと考えられます。

②金融機関は遺産分割の成立まで相続人からの支払を拒むことができるか(債務者への影響)
[結論] 肯定
[理由] 本決定はあくまで相続人間の訴訟の事案に関するものですが、判決理由が預貯金債権について相続人が準共有すると述べ、相続時の当然分割を否定している以上、今後は金融機関は相続人単独での預金の引き出しを拒みうる立場にあるものと考えられます。

この点は、実務上は、相続人単独での預金の引き出しを拒み続けていた金融機関もありましたが、本決定はこの取り扱いにお墨付きを与えたものと言うことができると考えられます。

③過去の遺産分割への影響(遡及的効果)
[結論] 不透明
[理由] 本決定は、従来の判例を前提としてすでに成立した遺産分割については、何も触れておりません。

そこで、従来の判例を前提に遺産分割を行なった当事者が錯誤による無効を主張したらどうなるのか、という懸念はあります。

一般的に、すでに終わったはずの相続の蒸し返しを行うことは相当とは言えない場合が多いでしょう。

しかしながら、決定理由を見る限り、過去の遺産分割については効力を維持するとの理由は見出し難いところです。

もっとも、動機の錯誤が認められる場合(=動機の表示があった場合)が限られているため、そもそも錯誤の成立が裁判上認められる場合は非常に限られているとは思われますが、そのような可能性が完全に排斥されている訳でもない点は留意しておきたいと思います。

この点において、本決定は、非嫡出子に対する相続分の差別的取扱いを行なっていた民法の規定(当時)を違憲とした際の判例変更とは事情が異なっているように思われます。

以上は、もちろんのこと、一人の実務家の私見に過ぎません。また、私自身、分析が甘い点があるかもしれません。

本件判例を巡っては、今後半年程度は研究者から論考の発表が相次ぐものと思われますので、注目して行きたいと思います。

2016年12月2日金曜日

節税目的の養子縁組は有効か?

弁護士ドットコムニュースさんより、節税目的の養子縁組に関するニュース記事の寄稿依頼を頂きましたので、記事を書かせて頂きました。

タイトル:最高裁「節税目的の養子縁組は有効」の初判断を下すのか? 弁護士が予想

URL:https://www.bengo4.com/zeimu/1124/n_5358/




相続税対策で生前に行った孫との養子縁組は無効かーー。別の遺族が孫を訴えた裁判で、最高裁第3小法廷が12月20日、弁論を開くと報じられている。判決では、節税目的の養子縁組は有効とする初判断を示す可能性がある。

報道によると、この裁判は、2013年に82歳で死亡した男性が生前、長男の子どもと養子縁組をしたことに対し、男性の長女と次女が無効を訴えていた。一審の東京家裁は有効と判断したが、二審の東京高裁は「税理士が勧めた相続税対策にすぎず、男性は孫との間に真実の親子関係を創設する意思はなかった」として、無効と判断。孫側が上告していた。

最高裁では、この二審判決が見直される可能性がある。相続について詳しい弁護士はどのように見ているのだろうか。加藤尚憲弁護士に話を聞いた。

●なぜ「養子縁組が節税になる」?

相続税は、大雑把に言うと、相続財産の額が「基礎控除」の額を超えた場合のみ課税されます。基礎控除は、次の式から導くことができます。

・基礎控除=3000万円+法定相続人の人数×600万円

つまり、養子縁組により法定相続人の数を増やせば、「基礎控除」の額が増えるため、節税に繋がるのです。

ただし、節税目的で多数の人を養子にすることを防ぐため、実子のいる場合は養子1人まで、実子のいない場合は養子2人までを、上記の式の中で法定相続人の人数として数えることになっています。

●節税目的の養子は本当にダメなのか?

養子縁組は、当事者の間で養子縁組をする意思を欠いている場合は、無効となります。

節税目的だからと言って、直ちに養子縁組をする意思を欠いているとは言えません。しかし、節税が唯一の目的の場合、本当に養子縁組をして、法律上の親子関係を築く意思があるのかが問題となります。

過去の下級審では、事案によって判断が分かれています。節税だけが目的の養子縁組を無効と判断した裁判例もありますし、他方で、「節税目的だからといって直ちに縁組意思がないとはいえない」として、養子縁組を有効と判断した裁判例もあります。

●最高裁、見直しの可能性は?

さて、裁判所が上告を棄却する場合は、弁論を開く必要がありません。逆に言えば、今回のように、わざわざ弁論が開かれることは、二審の判決が見直される可能性が高まったとも言えるのです。

しかし、最高裁が二審の判決を見直すとしても、必ずしも「節税目的の養子縁組は全て有効である」という内容の判断を行うとは限りません。

むしろ「節税が目的であるとからといって、それだけで縁組意思がなかったとはいえない」という至極当たり前の判断をする可能性もあると思われます。

仮にそうだとすれば、今後も節税目的の養子縁組の有効性はケースバイケースの判断にとどまることになるでしょう。この判決でも、従来の下級審裁判例で用いられてきた判断の基本的な枠組みが維持されるものと予想します。

(弁護士ドットコムニュース)