東京西法律事務所

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2014年5月22日木曜日

弁護士に相談するタイミングと「成功の確率」(後編)

前編では、弁護士に相談するタイミングによって、ご相談内容が良い結末を迎える可能性が大きく変わるという話をお伝えしました。

後編では、もう一つ、大事な発見をお伝えします。

それは、Aグループに属するご相談者の方多くが、順調で幸せな人生を送られている方が多い、ということです。

このことに気がついたとき、私はなぜか?と理由を考えました。

Aグループご相談者の顔を思い浮かべながら、その方々とこれまでお話ししたことを思い出してみました。

そこで、ハタと気が付いたのです。

早めに弁護士に相談する方は、プライベートでも、ビジネスでも、数年先のことを考えてしっかりと手を打っていらっしゃることが多いのです。

そういう方は、いつも先の事について考える習慣ができているため、自然と弁護士に相談するタイミングも早めになるのです。

謎解きをしてみると平凡な話ではありますが、平凡な中にこそ重要な真実があります。

幸せを手に入れるために、未来を向いて生きるということは、大切なことなのです。



2014年5月21日水曜日

弁護士に相談するタイミングと「成功の確率」(前編)

以前、「弁護士選びの秘訣」について、【前編】【中編】【後編】の3回に分けてお知らせしました。(特に後編は人気記事となりました)

今日は、続編という訳ではありませんが、弁護士に相談するベストタイミングについてお話したいと思います。

さて、弁護士として多くの方からご相談を受けている中で、私は、初回のご相談のタイミングにより、ご相談の内容が、お客様にとって幸せな形で解決するか(これを「成功の確率」と名付けることにします)に大きな差があることに気がつきました。
仮に、初回のご相談のタイミングにより、ABCの3グループに分けることにします。

Aグループ(15%の方)将来起きそうな事についてのご相談
「この先、確実にこういう困ったことが起きそう。その場合、どうしたらいいですか。」といったタイプのご相談です。「転ばぬ先の杖」の考え方と言うと分かりやすいでしょう。
典型的には、将来に備えた遺言書の作成のご依頼が含まれます。

Bグループ(80%の方)起きたばかりのことについてのご相談
多くの方がこのタイプに当てはまります。遺産分割交通事故など、何かが起きてから、比較的すぐにご相談にいらっしゃる方です。

Cグループ(5%の方)かなり昔に起きたことについてのご相談
例えば、第三者に訴訟を提起され、何回か自力で進めてみたものの、思う方向に行かず、やむなく弁護士を探す方など、弁護士に相談した段階で物事が相当程度進行している場合です。

そして、これらの3グループのどれに属するかにより、「成功の確率」が大きく変わるのです。

Aグループでは、ほとんどの場合、物事が非常にうまく運び、お客様は満足されます。

Bグループでは、ケースバイケースで一概に言う事はできませんが、正式な依頼をお受けする段階ではある程度の見通しが立っていることが多いです。

Cグループでは、良い結果はほとんど得られた試しがありません。せっかく受任してもできることがないため正式なご依頼をお断りせざるをえないこともあります。

これほどまでに、初回相談のタイミングで成功の確率が異なるのは、最初のご相談が早ければ早いほど、①戦略的な選択肢が広い(弁護士の適切なアドバイスにより、誤った選択による取り返しのつかないダメージを回避できる)、②証拠の収集や保存が容易である(秘密裏に重要証拠を収拾しやすい)など、「成功の確率」に大きな影響を及ぼす複数の要因において有利になる(別の言い方をすれば、弁護士が効果的なアドバイスをしやすくなる)からであると考えられます。

初回の相談にかかる費用が5千円から1万円程度であることを考えるなら、早期に法律相談を受けておくことは非常に投資効率が良くAグループに属する人は、合理的な行動を取る人であると言う事もできるでしょう。

要するに、弁護士に相談するベストタイミングは、「なるべく早く」という結論になります。

さて、このお話は、もう少し興味深い続きがあります。実は、3つのグループ分けは、お客様の人生そのものに影響しているのです。知りたい方は後編へどうぞ。

2014年5月18日日曜日

ブログ開設1ヶ月(人気記事ランキング付き)

いつも当ブログをご覧頂き、ありがとうございます。

早いもので当ブログも開設から1ヶ月が経過しました。

既に32記事を公開し、当初ほどのハイペースさではありませんが、順調に更新を続けております。

また、一昨日をもって、累計1000viewに届きました。ありがとうございます。

さて、【ブログ開設1週間の記事】の際の人気記事ランキングを振り返ってみると、以下のようになっていました。

1位 養子縁組と相続 17view

2位 間違いさがしに挑戦 16view

3位 限定承認の「使い途」 中編 16view


そして今回、ランキングの顔ぶれが、がらっと入れ替わっております。

1位 筆跡鑑定の真実(前編) 28view
2位 筆跡鑑定の真実(中編) 23view
3位 筆跡鑑定の真実(後編) 23view
4位 明治へGo!(前編)     22view
5位 King KAZU!!       22view
(「ブログ公開のお知らせ」はランクからは除外しました)

何と、「筆跡鑑定の真実」シリーズが上位を独占。
戸籍について書いた「明治へGo!」が一角に食い込みました。
「King KAZU!!」は、相続の話ですらありませんが(苦笑)、いずれにせよ画像の入った記事が読みやすいのかもしれませんね。
読み逃した記事があれば、是非この際にご覧下さい。

今後とも当ブログをよろしくお願いします。

クイズで相続放棄(解答編)

お待たせしました。解答編です。(問題編をまだご覧になっていない方は、問題編を先にご覧下さい。)

[答え]
相続放棄する必要があるのは、問題編のお話に出てきた人全員です(もちろん太郎さん本人は除きます)。

詳しい説明は、「わかる相続」本サイトの【7-1-3 相続の放棄】の「具体例」をご覧頂くことが最も早いと思われますので、ここでは繰り返しません。

ただし、今回の事例は、上記本サイトの具体例と少し違うところがあります。それは、太郎さんの祖母のトメさんの存在です。

直系尊属が相続人となる場合、被相続人(この事例の太郎さんの立場の人)に最も近い親等の人だけが、相続人となる」というルールがあります(【4-2-4 直系尊属が相続人となるとき】)。

小太郎さんが相続放棄をしたとき、このルールに従い、直系尊属の中でもっとも優先して相続人となるのは、太郎さんの両親である良太郎さんと和子さんです。

そして、この2人の双方が相続放棄をしたときは、この2人は最初から相続人とならなかったものとみなされるので(民法939条)、残った唯一の直系尊属であるトメさんが相続人となります。

ちなみに、トメさんも相続放棄したときは、直系尊属はいなくなるので、兄弟姉妹である次郎さんが相続人となります。

そういう訳で、花子さん、小太郎さん、良太郎さん、和子さん、トメさん、次郎さんの全員が、相続放棄をするという結論になります。

いかがでしたでしょうか。相続放棄は、単純承認や限定承認と異なり、意外と多くの人を巻き込みます。

ちなみに、相続放棄によって代襲相続はおきませんが、上記の直系尊属の中での優先順位の定めは代襲相続とは無関係ですので、混同しないように注意しましょう。



2014年5月15日木曜日

クイズで相続放棄(問題編)

いきなりですが、問題です。ちょっと長い問題文ですが最後までご覧下さい。

[問題]
東京でIT関連会社を起業した太郎さんには、家族として妻の花子さんと長男の小太郎さんがいます。

太郎さんの故郷の田舎町には、父良太郎さんと母和子さんが住んでいます。

良太郎さんと和子さんの間には、長男の太郎さんのほか、二男の次郎さんがいて、良太郎さんたちと同居しています。

太郎さんの母方の和子さんの家系は代々長命で、和子さんのお母さんのトメさんが98歳で存命中です。太郎さんの祖父母のうち、他の方はすべて亡くなっています。

太郎さんの会社は業績を順調に伸ばし、何もかも幸せに見えた太郎さんの人生ですが、何と太郎さんは急性の難病にかかり、入院後あっという間に40代の若さで亡くなってしまいました。

残された人たちが調べてみると、太郎さんの会社は金融機関から多額の借金をしており、社長である太郎さんは借金の連帯保証人になっていました。

ところが、太郎さんが亡くなったことで会社の存続自体が危うくなってしまいました。

2ヶ月にわたる財産調査の結果、太郎さんの親族は、太郎さんの相続を放棄することを決意しました。

さて、相続放棄する必要があるのは、これまで出てきた人たちのうち、一体誰と誰でしょうか?

[ヒント]
この話は、「わかる相続」本サイトの【7-1-3 相続の放棄】に掲載した事例とそっくりです。

でも、あれれ?よく見るとちょっとだけ違うところがありますね。そこが今回の考えどころです。

答えは後編で公開します。お楽しみに!

2014年5月14日水曜日

ブログの模様替え(お知らせ)

いつも当ブログをご愛読頂きありがとうございます。

読みやすさの向上のため、少し大胆に当ブログのデザインを変更いたしました。

また、画面左端にtwitterのフォローボタンを設けました。わかる相続の公式ツイッターアカウント(@wakarusouzoku)のフォローはこちらからお願いします。

今後とも当ブログを宜しくお願い申し上げます。

2014年5月13日火曜日

King KAZU!!

予め申し上げますが、本日のエントリーは相続とは全く関係がありません。
相続の情報を期待してご覧の方、申し訳ありませんが、別のエントリーをご覧下さい。

さて、本日お客様から意外なプレゼントを頂戴しました。

King KAZUこと三浦知良選手のサイン入りシャツです。

以前、雑談の際にサッカー話で盛り上がったのをお客様が覚えていらっしゃって、とあるルートで入手頂いたとのことでした。



40歳を遥かに超えてなお現役、「生ける伝説」の域に達しつつある三浦選手ですが、Jリーグの黎明期に青春を過ごした私たちの世代には、様々な記憶に留まる選手でもあります。

このシャツは、いずれ額装して事務所のどこかに飾ろうと思いますので、当事務所に遊びに来られる方は楽しみにお待ち下さい。

○○様、ありがとうございました!

2014年5月12日月曜日

遺産分割調停で「解決する争い」と「解決しない争い」

先日、【知って安心、遺産分割調停】で遺産分割調停の手続にかかる費用や時間について簡単に紹介しました。

今日はその続きです。

実は、遺産分割調停も、万能ではありません。中には、遺産分割調停で解決がつかない争いもあります。その典型的な例をご紹介します。

a) 遺言の有効性に関する争い
→よくある話ですが、相続人の間で、遺言書を無効と主張する立場から、遺産分割調停が起こされることがあります。

しかし、遺言書の有効性について話し合いが平行線に終わり、解決しないことが多いです。
そのような場合は、いったん遺産分割調停を取り下げ、遺言無効確認訴訟を提起する以外に、解決の方法はありません。

従って、最初から遺言無効確認訴訟を提起する方が近道の場合が多いです。

b) 遺産の範囲に関する争い
→ある財産が誰のものか、帰属がはっきりとせず、相続のときに争いになることがあります。
ある財産を取得したときに誰がお金を出したのかはっきりしなかったり、あるいはある財産について特定の相続人に生前贈与がなされていたかが争いになることもあります。

このような場合、いったん遺産分割調停の中で話し合いますが、話し合いがまとまらない場合は、遺産確認の訴え(遺産確認訴訟)を提起する以外に解決の方法はありません。

c) 使途不明金に関する争い
→これもよくある話ですが、親の預貯金を子供のうちの一人が管理しているとき、親が亡くなった後で、他の子供から、「使途不明金がある」と主張される場合があります。

この主張は、正しい場合と、単なる思い込みの場合がありますが、いずれにせよ、話がまとまらない場合は、遺産分割調停では解決できません。なぜなら、遺産分割は、ある財産が存在していることが前提のため、あるかないかがはっきりしていない財産について、協議を進めようがない場合です。

どうしても使途不明金について話がつかない場合は、遺産分割とは別途、不当利得返還請求訴訟を提起する以外に解決の方法はありません。

3つの典型例を挙げてみました。

最短距離での解決を目指すためには、正しい手続の選択が大事です。

【関連する本サイトの記事】
9-1-9 遺産分割調停
5-2-5 遺言無効確認訴訟

2014年5月10日土曜日

限定承認と相続放棄の合わせ技(後編)

前編に続き、後編では、「どのような目的で限定承認と相続放棄を組み合わせるのか」ということをご説明します。

限定承認と相続放棄を組み合わせるメリットのある場合は次の通りです。

(1)相続に興味のない相続人がいる場合

まず、前提から説明します。


限定承認をした相続人は、財産の換価や、債権者への弁済など、様々な手続を行います(詳しくは、本サイトの記事「7-1-4 相続の限定承認」の「(4)申述後の手続」をご覧下さい)。

そして、債権者への弁済後に残った相続財産があれば、これを相続することができます。

しかし、財産が残るかどうかに関わらず一切相続をしたくない相続人がいる場合は、その人をわざわざ限定承認申述後の手続に付き合わせる必要はありません。

そのような相続人には、(限定承認ではなく)相続放棄してもらい、相続の手続から完全に解放してあげれば良いのです。

(2)不動産について先買権を行使する場合

限定承認の「使い途」(中編)でご説明した、パターン②(先買権行使の場合)の目的で限定承認を行う場合で、先買権行使の目的が不動産(例えば自宅)であるときを考えてみましょう。

このような場合、手続の入り口で限定承認を行う人を絞り込み、先買権行使を行う予定の相続人だけが限定承認し、その他の相続人は相続放棄を行うことにより、不動産登記費用を節約することができるというメリットがあります。

詳しくは以下の通りです。

まず前提として、複数の相続人が限定承認をして、その後に一部の相続人だけが不動産について先買権を行使した場合、以下の通り、登記は2回行うことになります。

1回目は、限定承認をした相続人全員の名義による相続登記
(普通の相続登記と見かけは同じです)

2回目は、先買権の行使によって権利が変動したことによる登記
(この場合、「民法932条但書による価額弁済」という特殊な登記原因による登記がなされます)

登記を2回行うということは、登記費用も2回発生するということです。

しかし、先買権行使を行う予定の相続人だけが限定承認を行い、残りの相続人は全員相続放棄すれば、登記は1回(普通の相続登記のみ)で済みます

なぜなら、限定承認を行った相続人と、先買権行使を行った相続人が完全に一致しているため、先買権の行使の際に、新たに権利変動が生じないからです。

今日はちょっと難しい話になってしまいましたね。要するに、登記費用が節約できるという所を押さえておけば大丈夫です。

【関連する本サイトの記事】
7-1-4 相続の限定承認

2014年5月9日金曜日

限定承認と相続放棄の合わせ技(前編)

先月、このブログで「限定承認の使い途(前編)」「同(中編)」「同(後編)」と題して、3回にわたり限定承認について基礎から実務家向けの情報までを公開させていただきました。(まだご覧になっていない方は、是非併せてご覧下さい。)

本日は、これらの記事で取り上げなかった「限定承認と相続放棄の合わせ技」について触れたいと思います。

まず話の始めに民法923条を見てみましょう。

(共同相続人の限定承認)

第九百二十三条  相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

限定承認は「相続人の全員」が共同してのみ(つまり、相続人全員が揃ってはじめて)することができると書いてありますね。実際にも、良くそのように説明されていますし、私も学生の頃はそう習いました。

でも、現場ではこれは必ずしも本当じゃないのです。

どういうことかというと、「限定承認」と「相続放棄」を組み合わせて、一部の相続人が相続放棄をし、残りの人が限定承認をする、ということができるのです。

「え?だってさっき『全員が共同してのみ』って書いてあったでしょ?法律違反じゃないの?」

とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、別の条文があるのです。

(相続の放棄の効力)
第九百三十九条  相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続人の一部の人が相続放棄をすると、限定承認との関係でも、相続放棄をした人は、相続人でなかったものとみなされます。

つまり、残りの相続人だけが「相続人の全員」になるので、残りの人全員で限定承認をすれば良いことになるのです。

何だか、マジックのような理屈ですね。
でも、実際にそう考えられていますし、その背景には、「相続放棄したい人まで限定承認の手続に巻き込む実益がない」という判断があるように思います。

では、次に、「どんな目的で、わざわざ限定承認と相続放棄を組み合わせるの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。

その疑問には、後編でお答えします。

[予定地] 筆跡鑑定の真実(特別編)

(読者の皆様へお知らせ)
折角ご覧頂いたのに申し訳ありませんが、昨日公開の「筆跡鑑定の真実(後編)」で予告致しました本記事(特別編)は、文章の分量が多くなる見込みのため、後回しにすることに致しました。
出来次第、この場所に文章を掲載する予定です。
宜しければ、先に本日公開の「限定承認と相続放棄の合わせ技(前編)」をお楽しみください。

2014年5月8日木曜日

筆跡鑑定の真実(後編)

筆跡鑑定について、前編(筆跡鑑定の簡単な紹介と面白い「筆順」について)、中編(筆跡鑑定を依頼する立場からのポイント)の2回にわたって解説をしてきました。

さて後編では、筆跡鑑定がどのように訴訟の場で扱われているか、という話をします。

これまでずっと筆跡鑑定について語ってきて、このような話をすると、本ブログ読者の皆さんは「ずっこける」かもしれませんが、実は、筆跡鑑定は、訴訟の場では必ずしも信用されていないんです。

もちろん、全く信用されていないという訳でもないし、実際に裁判の場で利用されてもいるのですが、一般的なイメージとは違って、必ずしも筆跡鑑定は「決め手の証拠」と捉えられていません。

先日、とあるブログがツイッターで話題になりました。


早速このツイートで取り上げられているブログを拝見すると...

-----以下引用--------
まず、裁判所は、筆跡は、ほとんど参考にしない。
依頼者や相談者が、弁護士に偽造を主張する最大の根拠は、たいてい、この筆跡である。しかし、裁判所は、筆跡を重視しない。というか、ほとんど無視する。筆跡などは、時と場合によってころころ変わるばかりか、偽造する場合などは、本人の筆跡に似せて作成するから、筆跡を対比する意味などない。筆跡など意味がないと考えるのだ。
-----引用ここまで----
(出典:自筆証書遺言「偽造」問題について裁判所は、どのように判断するか 離婚専門・遺産相続弁護士の日々雑感/ウェブリブログ)
 http://tb.bblog.biglobe.ne.jp/ap/tb/3f5ff8859f

また、このブログの感想として、以下のツイートもありました。




私も、上記ツイートと同じ印象を持っています。つまり、「裁判所は、筆跡は、ほとんど参考にしない」という言い方はやや強過ぎるものの(実際に、先日も筆跡鑑定の申立をしたところ、スムーズに採用されています)、おおむねこのブログのおっしゃっていることは正しく、実態として、裁判所は筆跡鑑定を重視していないのです。

その理由は、上記ブログにも取り上げられているのですが、鑑定が必ずしも正確になされないからです。もっと言うと、(裁判所を通さずに鑑定を依頼した場合)鑑定の依頼者に迎合するような鑑定が横行しているからなのです。

その結果、世間一般に、結論が異なる鑑定書が、双方の当事者から証拠として裁判所に提出されるということが起きてしまうのです。

そこで裁判所は、いい加減な鑑定書に騙されないように、筆跡鑑定の結果以外の事実を重視するのです。例えば、①遺言書が発見された経緯に不自然な点がないか、②遺言書の中身が遺言者の普段の言動と一致しているか、③過去に別の遺言書を残していた場合は、過去からの変動について明確な理由があるか、といった事情を考慮します。

そういう訳で、筆跡鑑定で望む結果が出ればOKか、というと決してそうではなく、裁判に勝つためには事案に応じて色々と立証の工夫をしていく必要があるのです。

なお、世の中には、真面目にやっている鑑定人も沢山いらっしゃると思います。前編で取り上げた吉田公一氏の著書を読んでも、真摯に鑑定に取り組んでいらっしゃる様子が伝わってきます。また、以前、ある鑑定士さんに簡易鑑定をお願いしたときは、意に沿わない内容を率直に教えて頂きました。私は、そういう真面目な鑑定士さんが増え、筆跡鑑定の信用性が向上することを願っています。
なお、筆跡鑑定を利用する立場からも、意に沿わない結果が出たときには、プロの判断を尊重し、きちんと受け止めることが大切であると考えています。

さて、筆跡鑑定について3回にわたって連載してきましたが、若干書き足りないところもありますので、特別編と題して、実際にあった「あの有名な事件」について書く予定です。乞うご期待!


【関連する本サイトの記事】
5-2-5 遺言無効確認訴訟

筆跡鑑定の真実(中編)

前編では、筆跡鑑定の入り口として、「筆順」による判断方法を紹介しました。

ここからは、役立つ情報として、筆跡鑑定を依頼する際のポイントを解説します。

さて、筆跡鑑定は、一般に誤解されがちなところがありますが、誤解したまま依頼すると失敗することがあります。

失敗を避けるために、ありがちな誤解と、正しい理解を挙げてみました。

①鑑定人の意見の対象
×誤解 鑑定人は、「ある文書を本人が書いたものか」について教えてくれる。
○正解 鑑定人は、「『ある文書』と『別の文書』を同じ人が書いたのか」について教えてくれる。

筆跡鑑定では、複数の文書を比較し、それらを同じ人が書いたのかどうかを調べます。
従って、筆跡鑑定を行うためには、比較対照用の文書が必要です(これを「対照資料」といいます)。
しかし、鑑定人には、対照資料を誰が書いたのかまでは分かりません。
従って、対照資料は、本人が書いたことが明らかであるもの(例えば、第三者の面前で自署したとか、パスポートのサインなど文書の性質上本人が書いたことが間違いないと思われるもの)であることが必要です。

②文字の種類
×誤解 筆跡鑑定では、本人が書いたものなら違う文字でも筆跡が同じかどうかわかる
○正解 筆跡鑑定では、同じ文字同士を比較する必要がある

違う文字同士ではなかなか比較は難しいようです。対照資料を探すときは、同じ文字があるものを探しましょう
もっとも、自筆証書遺言には必ず氏名が書かれていますし、氏名が書かれている対照資料は比較的見つけやすいです。

③コピーの鑑定
×誤解 コピーと直筆は同じ筆跡だから、鑑定資料や対照資料はコピーでもまったく問題がない。
○正解 鑑定資料や対照資料は、直筆が原則である。

コピーの際に、こまかなインクの走りが消えることもあります。また、筆圧でできた紙の凹凸などはなくなります。
従って、筆跡鑑定の際の資料は、原則として、直筆のものを使用します。コピーがある場合も、なるべくコピー元の直筆を探して下さい
もっとも、多くの鑑定人は、コピーでも鑑定自体は行ってくれます。

④対照文書の古さ
×誤解 対照資料はいつ書いたものでも構わない。
○正解 対照資料は、鑑定文書となるべく同時期に書かれたものが望ましい

筆跡は、同じ人でも年の経過とともに変わっていきます。
従って、対照資料は、鑑定資料の前後5年以内くらいに書かれたものが望ましいようです。

最後に、筆跡鑑定の費用と期間について触れます。

正式鑑定の場合、費用は30万円~、期間は1ヶ月くらいが目安です。

ただし、裁判所を通さない鑑定の場合、いわゆる簡易(予備)鑑定をしてくれる鑑定人がいます。

簡易(予備)鑑定とは、鑑定書を作らずに、結論だけを口頭で教えてくれるというものです。

これだと、期間は1週間程度、費用は数万円で済みます。

簡易(予備)鑑定は、鑑定書を作成しない以上、証拠にはなりませんが、あらかじめ結論を知っておけば、高額な費用を負担して無駄な鑑定依頼を行うことを避けることができます。

後編では、弁護士のブログらしく(!)、訴訟の現場で、筆跡鑑定がどのように利用されているかについて触れます。

ちょっと、これまでの話の流れとは違う話です。

【関連する本サイトの記事】
5-2-5 遺言無効確認訴訟

筆跡鑑定の真実(前編)

今日は、某界隈で話題となっておりました、筆跡鑑定の話をします。

筆跡鑑定については、少し書くことが多いので、当ブログではお馴染みとなって参りました、3日間にわたる前中後編の3回シリーズの形式で連載します。

さて、筆跡鑑定といえば、この一冊。




吉田公一 著「筆跡・印章鑑定の実務」(東京法令出版)

筆跡鑑定の本は何冊か世に出ていますが、この本の人気が最も高いようです。(惜しいことに絶版なので、現在は書店では手に入りませんが)

著者は、元科学警察研究所で文書鑑定畑を歩まれた筆跡鑑定の第一人者、吉田公一(まさかず)さんです。

以前、仕事がらみで法律雑誌のバックナンバーの筆跡鑑定について書かれた記事を調べたことがあったのですが、出てきた記事はたいていこの方が書かれていました。それくらい有名な方です。

さて、法律家から見ると筆跡鑑定は違う畑ではありますが、調べてみると意外と面白いところがあります。

下の図をご覧下さい。この本の110ページに掲載されているものですが、この図は、「平」の字と、「田」の字のそれぞれの筆順を表したものです。
見やすいように、太字の部分を私が赤く着色しています。
図の右側の数字は、左側の筆順に従って書く人のパーセンテージを表しています。





平の字と田の字のそれぞれ一番上に書いてある筆順が「原則筆順」(学校で習う筆順ですね)と呼ばれるものですが、これを見ると「田」の字については、むしろ、過半数の53.8%の人が別の筆順(上から2番目)で書いているのです(私もその一人です)。

これに比べ、「平」の字は95.3%の人が、原則筆順と同じ筆順で書いています。ということは、筆順が違う人は、「珍しい」ということになります。

もし、筆跡鑑定の対象である文書に、「珍しい」筆順で書かれている字があったとしたら、書いた人を特定する手がかりになりますね。

逆に、自筆証書遺言に本人と異なる筆順で書かれた字が混じっていたとしたら、その遺言書は本物かどうか疑わしいものになります。

人の筆跡は、時間が経つと変わりますし、その日の気分や体調にも左右されますが、筆跡の専門家の間でも、筆順はなかなか変わらないものとされています

あなたの筆順はどうでしたか?

このように、筆順が手がかりになることがあるのですね。

筆跡鑑定のポイントは沢山ありすぎてブログでは書ききれません(何せ本一冊分あるのですから)し、私も筆跡鑑定そのものの専門家でもありません。

そこで中編では、筆跡鑑定を依頼する立場からのポイントに絞って触れたいと思います。

【関連する本サイトの記事】
5-2-5 遺言無効確認訴訟

2014年5月7日水曜日

知って安心、遺産分割調停

今日は、遺産分割について争いが起きたときの心構えについて書きます。

争いは、誰しも、避けられるのであれば、避けたいと思っています。争いごとは、煩わしいですよね。

しかし、争いを常に避けきれるとは限りません。

たとえば、遺産分割協議でほかの相続人があなたに一方的に譲歩を迫ってきたり、財産を隠して開示しないなどといったことが起きるかもしれません。

そのように、他の相続人が不合理な態度を取る場合は、あなたは毅然とした態度で臨む必要があります。

また、その結果として、相手との交渉が決裂するのであれば、やむを得ないという心構えでいる必要があります。

もし、逆にあなたがいかなる場合も争いごとを避けたいと考えるならば、あなたは相手の言いなりになるしかありません。

このように、他人と交渉するには、常に腹をくくって臨む必要があるのです。これは、相続であろうと、ビジネス上の交渉であろうと、同じ事なのです。

そして、「腹をくくる」ためには、交渉がうまく行かず、法律上の手続による解決を図る必要があった場合、どのような事態になるのか、ということを知っておく必要があります。

ポイントは、手続にかかる時間費用、そして結果の見通です。

これらを知ってしまえば、もう怖いことなどありません。交渉にも自信をもって臨むことができます。

まず、遺産分割調停にかかる時間は、少し古いデータですが、平成19年の統計で平均5.2ヶ月程度という情報があります。

費用は、裁判所に支払う費用は印紙代1200円と郵便切手代です。
不動産の価格に争いがある場合、鑑定費用(30万円~)がかかります。
弁護士費用は、相続財産の額や、相続人の数によります。私は、ご相談頂いた方が相続されるであろう金額を基準にして決めています。

遺産分割の細かい話は、下記のリンクに詳しく書いてありますので、参考にしてみて下さい。

【関連する本サイトの記事】
9-1-9 遺産分割調停

2014年5月3日土曜日

名寄帳(固定資産課税台帳)と共有財産

みなさんは、「名寄帳」をご存知ですか?

名寄帳は、またの名を「固定資産課税台帳」といいます。

この「名寄帳」が、相続の際に活躍することがあります。

それは、亡くなった方が持っていた不動産を漏らさず調べたいときです。

名寄帳を見れば、市区町村ごとに、ある人の持っている不動産が全部分かります。とても便利ですね。

ところが、ある例外的な場合は、名寄帳を見ても、不動産を発見できない場合があります。

それは、不動産が共有の場合です。

名寄帳は、固定資産税の課税のために作られています。

共有の不動産は、実務上、共有者の筆頭の人がまとめて固定資産税を納税し、残りの共有者に持分に応じて求償します。

従って、役所は筆頭の人さえ把握できれば良いので、他の共有者の名前で検索しても出て来ないのです。

場合によっては、相続の手続がすべて終わった後で、筆頭者から固定資産税の負担についての連絡を受け、持分が発見されることがあります。

困った話なのですが、良い解決方法はまだ見つかっておりません。しかし、「名寄帳にもない共有の不動産があるかもしれない」ということは頭の片隅に入れておいた方が良いでしょう。

【関連する本サイトの記事】
6-2 不動産の調査

2014年5月2日金曜日

続・養子縁組と相続

以前、養子縁組と相続という題で記事を書いたところ、沢山の方にご覧頂きました。

本日は、ちょっとだけですが、その続きです。

養子縁組は、赤の他人よりも、親戚との間の縁組みが多いということは、以前に述べた通りです。

実は、このことは、相続との関係でも意味を持つことがあります。

というのも、場合によっては、相続が発生したときに、同じ人が実親とのつながりでも、養親とのつながりでも、二重の資格で相続人になるということがあるからです。

典型的な例が、いわゆる「孫養子」の場合です。孫養子とは、読んで字の如く、祖父母と孫との間の養子縁組です。

このような場合、祖父母の一方が亡くなると、孫は亡くなった方の法定相続人になります。養子なのですから、当たり前ですね。

ところで、相続の発生前に、既にこの孫のお父さん(祖父母の子)が亡くなっていた場合、話が少しややこしくなります。

この場合、孫は、仮に養子縁組がなかったとしても、もともと代襲相続により亡くなったお父さんに代わって祖父母の法定相続人になるはずです。

つまり、この場合、孫は「養子として」と「代襲相続人として」のダブルの資格により、法定相続人となるのです。

それでは、このようなダブルの資格で法定相続人となる人の相続分は、どのように計算されるのでしょうか

単純に足すのか、多い方に合わせるのか、はたまた別の方法によるのか。

あなたはどう思いますか?

答えは、本サイト「4-2-7 被相続人に養子がいるとき」の(8)と(9)をご覧下さい

【関連する本サイトの記事】

4-2-7 被相続人に養子がいるとき