東京西法律事務所

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2014年5月10日土曜日

限定承認と相続放棄の合わせ技(後編)

前編に続き、後編では、「どのような目的で限定承認と相続放棄を組み合わせるのか」ということをご説明します。

限定承認と相続放棄を組み合わせるメリットのある場合は次の通りです。

(1)相続に興味のない相続人がいる場合

まず、前提から説明します。


限定承認をした相続人は、財産の換価や、債権者への弁済など、様々な手続を行います(詳しくは、本サイトの記事「7-1-4 相続の限定承認」の「(4)申述後の手続」をご覧下さい)。

そして、債権者への弁済後に残った相続財産があれば、これを相続することができます。

しかし、財産が残るかどうかに関わらず一切相続をしたくない相続人がいる場合は、その人をわざわざ限定承認申述後の手続に付き合わせる必要はありません。

そのような相続人には、(限定承認ではなく)相続放棄してもらい、相続の手続から完全に解放してあげれば良いのです。

(2)不動産について先買権を行使する場合

限定承認の「使い途」(中編)でご説明した、パターン②(先買権行使の場合)の目的で限定承認を行う場合で、先買権行使の目的が不動産(例えば自宅)であるときを考えてみましょう。

このような場合、手続の入り口で限定承認を行う人を絞り込み、先買権行使を行う予定の相続人だけが限定承認し、その他の相続人は相続放棄を行うことにより、不動産登記費用を節約することができるというメリットがあります。

詳しくは以下の通りです。

まず前提として、複数の相続人が限定承認をして、その後に一部の相続人だけが不動産について先買権を行使した場合、以下の通り、登記は2回行うことになります。

1回目は、限定承認をした相続人全員の名義による相続登記
(普通の相続登記と見かけは同じです)

2回目は、先買権の行使によって権利が変動したことによる登記
(この場合、「民法932条但書による価額弁済」という特殊な登記原因による登記がなされます)

登記を2回行うということは、登記費用も2回発生するということです。

しかし、先買権行使を行う予定の相続人だけが限定承認を行い、残りの相続人は全員相続放棄すれば、登記は1回(普通の相続登記のみ)で済みます

なぜなら、限定承認を行った相続人と、先買権行使を行った相続人が完全に一致しているため、先買権の行使の際に、新たに権利変動が生じないからです。

今日はちょっと難しい話になってしまいましたね。要するに、登記費用が節約できるという所を押さえておけば大丈夫です。

【関連する本サイトの記事】
7-1-4 相続の限定承認