東京西法律事務所

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2016年3月17日木曜日

空家と相続放棄について(前編)

最近、地方部を中心に管理が行き届かない空家が増えて来ており、社会問題になりつつあります。

先日、空家の相続に関してメディアから取材を頂き、読売新聞のウェブサイト(「発言小町」)に私のコメントが掲載されました(3月25日掲載)。

今回は、
ご両親が長期間空家になっている家を所有されている方からのご質問に詳しく回答させて頂きました。ご覧下さい(画面写真の後に文章が続きます)。

また、文字数の関係上、メディア原稿からは割愛せざるを得なかった話を本ブログでお話しします。後編も併せてご覧下さい。 

<リンク先:Yomiuri Online>
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/plus/kuragetlogy/20160323-OYT8T50031.html





【質問】
私の両親は、地方に空き家を所有していますが、もう何十年と空き家になっており、屋根瓦が飛ぶなど、人に怪我をさせる可能性があります。万一の場合、どのような法的責任を負う可能性がありますか。

また、空き家は売りたくても書い手がつかないような状態です。空家を手放す方法はありませんか。


【回答】

●「ご両親が健在なうちは、手放すことは困難」

相談者さんは空き家を手放すことを望まれているようですね。

残念ながら、ご両親が健在なうちは、空き家を手放すことは大変困難です。国や自治体が不要な不動産を引き取ってくれる可能性はほとんどありません。理由の1つとして、自治体にとっては、不動産を引き取ると固定資産税の減収につながることが挙げられます。

このように、ご両親が健在なうちは、空き家を持ち続けることを前提に考えざるを得ません。

もっとも、空き家は、どうしても管理が疎かになりがちです。修理が必要な家を放置した結果、壁が崩れたり、屋根瓦が飛んだりして、人に怪我をさせたり、隣家を傷つけた場合、危険工作物の占有者ないし所有者として損害賠償責任を負うことがあります(民法717条1項)。

賠償責任を免れるためには、空き家を取り壊すか、管理をきちんとする以外の方法はありません。

●「相続が空き家を手放す機会」

ところで、ご両親が亡くなった時点では、相続放棄によって空き家を手放す機会があります。ただし、これから述べる通りいくつかの注意点があります。

1つ目は、相続人全員が、法律の定める期間内(自分が相続人になったことを知った時から3か月以内)に裁判所に相続放棄の申立をする必要があることです。

法定相続人が相続放棄をすると、次順位の人が繰り上がるため、相談者やその兄弟姉妹だけでなく、ご両親の兄弟姉妹(兄弟姉妹のうち亡くなった方がいる場合は、亡くなった方の子)も相続放棄をする必要があります。

2つ目は、費用がかかることです。

空き家の管理責任を免れるためには、相続放棄の後に、裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。裁判所に申立を行うと、裁判所から手続費用の予納を求められます。予納金の額は数十万~100万円程度が一般的です。簡単に捻出できる金額ではありませんが、空き家を取り壊す費用に比べれば小さいともいえます。

3つ目は、相続放棄の際には、すべての相続財産をまとめて放棄する必要があり、欲しくない財産だけ放棄することはできないということです。

ご両親の財産の中に放棄したくない財産がある場合は、ご両親から生前贈与を受けておくか、ご両親の遺言書に基づいて遺贈を受けるか、いずれかの対策が必要です。いずれの対策もご両親が健在なうちにしかできないため、計画的に取り組む必要があります。なお、贈与や遺贈を受ける場合、贈与税や相続税の負担についての検討も欠かせません。

●「予め専門家への相談を」

今後は、空き家が増えていくことが予想されており、相続対策が必要な場合も多いと思います。相続放棄を予定する場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。

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