東京西法律事務所

このブログは東京西法律事務所(中央線・荻窪駅徒歩2分)が運営しています。ご相談のご予約は0120-819-674(はい、苦労なし)まで。土日・夜間のご相談も受け付けております。当事務所ホームページへのリンクはこちらをクリック

2014年4月22日火曜日

限定承認の「使い途」(中編)

引き続き、限定承認の「使い途」について説明します。

次のような場合には、限定承認には、相続放棄や単純承認にはないメリットがあります。

①潜在債務の相続を回避したい場合

どれだけ調査しても、まだ見つかっていない債務があるかもしれない、という場合があります。

例えば、被相続人(即ち亡くなった方)が、会社経営を行っていた場合、会社の債務を個人として連帯保証していることが良くあります。

しかし、保証債務は、通常は債務として余り意識されておらず、調査してもすぐには見つからないこともあります。

このような場合、相続を単純承認するにはリスクがあり、かといって放棄するのはもったいないため、限定承認が適しています。

②「先買権」を行使したい場合

「先買権」とは、限定承認を行った後、相続財産の中に相続人にとってどうしても手元に残したいもの(例:自宅など)があるときに、相続人が、その財産の価値に見合った金額を支払うことにより、その財産を手に入れることができる権利(一種の優先的購入権)をいいます。

本来、限定承認を選択した場合、相続財産はすべて競売され、代金が債権者への弁済に充てられますが、先買権を行使すれば、手放したくない財産を選んで確保することができます。

先買権は、限定承認だけに認められた制度であり、どうしても確保したい財産がある場合には、限定承認が有力な選択肢となります

なお、たとえ消極財産が積極財産を上回っている(すなわち債務超過)ことが明らかな場合でも、先買権を行使するために限定承認を申し立てることは可能です。

ところで、先買権を行使するためには、裁判所に鑑定人を選任してもらう必要があります。これは、もともと稀な限定承認の中でも更にレアケースで、平成24年の司法統計では、たった76件しか申し立てられておりません。私は、昨年1件を取り扱いましたが、裁判所の担当書記官にも馴染みがなく、当方から参考文献をコピーして送付してあげた思い出があります。

後編では、実際に限定承認を行う際に、どれくらいの期間がかかるかについて書きます。