今日は、某界隈で話題となっておりました、筆跡鑑定の話をします。
筆跡鑑定については、少し書くことが多いので、当ブログではお馴染みとなって参りました、3日間にわたる前中後編の3回シリーズの形式で連載します。
さて、筆跡鑑定といえば、この一冊。
吉田公一 著「筆跡・印章鑑定の実務」(東京法令出版)
筆跡鑑定の本は何冊か世に出ていますが、この本の人気が最も高いようです。(惜しいことに絶版なので、現在は書店では手に入りませんが)
著者は、元科学警察研究所で文書鑑定畑を歩まれた筆跡鑑定の第一人者、吉田公一(まさかず)さんです。
以前、仕事がらみで法律雑誌のバックナンバーの筆跡鑑定について書かれた記事を調べたことがあったのですが、出てきた記事はたいていこの方が書かれていました。それくらい有名な方です。
さて、法律家から見ると筆跡鑑定は違う畑ではありますが、調べてみると意外と面白いところがあります。
下の図をご覧下さい。この本の110ページに掲載されているものですが、この図は、「平」の字と、「田」の字のそれぞれの筆順を表したものです。
見やすいように、太字の部分を私が赤く着色しています。
図の右側の数字は、左側の筆順に従って書く人のパーセンテージを表しています。
平の字と田の字のそれぞれ一番上に書いてある筆順が「原則筆順」(学校で習う筆順ですね)と呼ばれるものですが、これを見ると「田」の字については、むしろ、過半数の53.8%の人が別の筆順(上から2番目)で書いているのです(私もその一人です)。
これに比べ、「平」の字は95.3%の人が、原則筆順と同じ筆順で書いています。ということは、筆順が違う人は、「珍しい」ということになります。
もし、筆跡鑑定の対象である文書に、「珍しい」筆順で書かれている字があったとしたら、書いた人を特定する手がかりになりますね。
逆に、自筆証書遺言に本人と異なる筆順で書かれた字が混じっていたとしたら、その遺言書は本物かどうか疑わしいものになります。
人の筆跡は、時間が経つと変わりますし、その日の気分や体調にも左右されますが、筆跡の専門家の間でも、筆順はなかなか変わらないものとされています。
あなたの筆順はどうでしたか?
このように、筆順が手がかりになることがあるのですね。
筆跡鑑定のポイントは沢山ありすぎてブログでは書ききれません(何せ本一冊分あるのですから)し、私も筆跡鑑定そのものの専門家でもありません。
そこで中編では、筆跡鑑定を依頼する立場からのポイントに絞って触れたいと思います。
【関連する本サイトの記事】
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