東京西法律事務所

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2014年5月9日金曜日

限定承認と相続放棄の合わせ技(前編)

先月、このブログで「限定承認の使い途(前編)」「同(中編)」「同(後編)」と題して、3回にわたり限定承認について基礎から実務家向けの情報までを公開させていただきました。(まだご覧になっていない方は、是非併せてご覧下さい。)

本日は、これらの記事で取り上げなかった「限定承認と相続放棄の合わせ技」について触れたいと思います。

まず話の始めに民法923条を見てみましょう。

(共同相続人の限定承認)

第九百二十三条  相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

限定承認は「相続人の全員」が共同してのみ(つまり、相続人全員が揃ってはじめて)することができると書いてありますね。実際にも、良くそのように説明されていますし、私も学生の頃はそう習いました。

でも、現場ではこれは必ずしも本当じゃないのです。

どういうことかというと、「限定承認」と「相続放棄」を組み合わせて、一部の相続人が相続放棄をし、残りの人が限定承認をする、ということができるのです。

「え?だってさっき『全員が共同してのみ』って書いてあったでしょ?法律違反じゃないの?」

とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、別の条文があるのです。

(相続の放棄の効力)
第九百三十九条  相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続人の一部の人が相続放棄をすると、限定承認との関係でも、相続放棄をした人は、相続人でなかったものとみなされます。

つまり、残りの相続人だけが「相続人の全員」になるので、残りの人全員で限定承認をすれば良いことになるのです。

何だか、マジックのような理屈ですね。
でも、実際にそう考えられていますし、その背景には、「相続放棄したい人まで限定承認の手続に巻き込む実益がない」という判断があるように思います。

では、次に、「どんな目的で、わざわざ限定承認と相続放棄を組み合わせるの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。

その疑問には、後編でお答えします。