先日、【知って安心、遺産分割調停】で遺産分割調停の手続にかかる費用や時間について簡単に紹介しました。
今日はその続きです。
実は、遺産分割調停も、万能ではありません。中には、遺産分割調停で解決がつかない争いもあります。その典型的な例をご紹介します。
a) 遺言の有効性に関する争い
→よくある話ですが、相続人の間で、遺言書を無効と主張する立場から、遺産分割調停が起こされることがあります。
しかし、遺言書の有効性について話し合いが平行線に終わり、解決しないことが多いです。
そのような場合は、いったん遺産分割調停を取り下げ、遺言無効確認訴訟を提起する以外に、解決の方法はありません。
従って、最初から遺言無効確認訴訟を提起する方が近道の場合が多いです。
b) 遺産の範囲に関する争い
→ある財産が誰のものか、帰属がはっきりとせず、相続のときに争いになることがあります。
ある財産を取得したときに誰がお金を出したのかはっきりしなかったり、あるいはある財産について特定の相続人に生前贈与がなされていたかが争いになることもあります。
このような場合、いったん遺産分割調停の中で話し合いますが、話し合いがまとまらない場合は、遺産確認の訴え(遺産確認訴訟)を提起する以外に解決の方法はありません。
c) 使途不明金に関する争い
→これもよくある話ですが、親の預貯金を子供のうちの一人が管理しているとき、親が亡くなった後で、他の子供から、「使途不明金がある」と主張される場合があります。
この主張は、正しい場合と、単なる思い込みの場合がありますが、いずれにせよ、話がまとまらない場合は、遺産分割調停では解決できません。なぜなら、遺産分割は、ある財産が存在していることが前提のため、あるかないかがはっきりしていない財産について、協議を進めようがない場合です。
どうしても使途不明金について話がつかない場合は、遺産分割とは別途、不当利得返還請求訴訟を提起する以外に解決の方法はありません。
3つの典型例を挙げてみました。
最短距離での解決を目指すためには、正しい手続の選択が大事です。
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9-1-9 遺産分割調停
5-2-5 遺言無効確認訴訟