東京西法律事務所

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2014年6月5日木曜日

兄弟での不動産の共有はなぜ「まずい」のか(後編)

前編では、兄弟の間で不動産を共有すると取り返しの付かないことになる、ということをお伝えしました。

では、これを回避するためには、どうしたら良いのでしょうか。

相続財産の中に、相続人と同じ数だけ、同じ程度の価値のある不動産が複数あったり、不動産の価値に見合うような金額の金融資産があれば、共有の回避はさして難しいことではありません。

しかし、現実には、相続財産の中に不動産が1つしかなく、しかも、めぼしい金融資産がない、というときがあります。

そのような場合は、「代償分割」といって、不動産を取得する相続人が、他の相続人に代償金を支払うことにより、バランスを取るという方法があります。

また、まだ相続が起きていない場合でも、同じような対策を取ることができます。

すなわち、遺言書を作成し、その中で相続人の1人に不動産を相続させるとともに、他の相続人に対して代償金を支払う負担を課すことができるのです。

もっとも、このような方法をとることができるのは、不動産を取得する相続人に資力がある場合に限られるという限界はありますが。

【関連する本サイトの記事】
9. 遺産分割

兄弟での不動産の共有はなぜ「まずい」のか(前編)

今日は、相続の際に起きがちな、「兄弟間での不動産の共有」についてお話しします。

親の世代が亡くなって、相続財産を分けるときに、自宅などの不動産を兄弟間で法定相続分に従った共有にすることがあります。

特に、まとまった額の預貯金など、他に分ける財産がない場合に、唯一の財産である不動産(往々にして自宅であることが多い)を兄弟間の共有とすることが見受けられます。

ところが、この「兄弟間での不動産の共有」は、遺産分割の際に避けるべきことの典型例なのです。

その理由は、以下の話を読んでいただくと良くわかります。

【事例】
太郎さんと次郎さんの父、良太郎さんが亡くなったとき、良太郎さんは、2人に相続財産として自宅を残しました。

もともと自宅には太郎さん一家が良太郎さんと一緒に住んでいましたが、太郎さんは自分だけが相続する訳には行かないと考え、次郎さんと話し合いの上、自宅を半分ずつの持分で共有する内容の遺産分割をし、登記も済ませました。

5年後のある日、次郎さんは重病にかかり、治療費がかさむようになりました。

そこで次郎さんは、以前に実家の半分を相続したことを思い出し、太郎さんに「自宅を処分して代金を分けるか、自宅に住み続けるなら太郎さんが持分を買い取ってくれないか」と持ちかけました。

しかし、太郎さんは生活に精一杯で持分を買い取るだけの余裕はありません。また、自宅を売ったら生活の場がなくなってしまいます。太郎さんは次郎さんの申し出をただ断るしかありませんでした。

そこで次郎さんは、やむなく裁判所に「共有物分割の訴え」を提起しました。裁判所は次郎さんの主張を認め、自宅を売却して代金を分割する旨の判決を下し、太郎さんは住処を失ってしまいました。

【事例ここまで】

いかがでしたか。兄弟間で不動産を共有することの恐ろしさがご理解頂けたのではないでしょうか。

唯一の相続財産である不動産を共有すれば、遺産分割の際には丸く収まるのですが、結局は問題の先送りでしかなく、いずれは問題がおきてしまうのです。

仮に何も起きなかったとしても、いずれは訪れる次の世代への相続の際に、更に持ち分が細分化され、複雑化していくことは避けられません。

では、兄弟間での共有を回避するための何か解決方法はあるのでしょうか。後編に続きます。

2014年6月2日月曜日

生前贈与の落とし穴-「名義預金」(後編)

前編からの続きです。

せっかく孫のために積み立てたはずのお金が「名義預金」となることを防ぐには、どうしたら良かったのでしょうか。

一言で言えば、「贈与が成立したことの証拠を残す」ことに尽きます。そのためのポイントをご紹介します。

ポイント① 贈与の事実を明らかにする

贈与契約書を作成して、贈与があったことを明確にしておきましょう。

契約書といっても、何も難しいことはありません。よろしければ【わかる相続本サイトのひな形】をご利用下さい。

なお、贈与を受ける方が未成年者の場合は、法定代理人(親)が代わりに贈与契約を締結して下さい。

また、贈与の金額が、贈与税の対象となる金額(年間110万円以上)である場合は、贈与税を納める必要がありますが、贈与税の申告書を保管しておくことで、贈与契約書に代えることもできます。


ポイント② 金銭の支配を移転する

お金の振込先である口座の通帳やカードを、贈与を受ける方が保管するようにして下さい。

贈与を受けた人がその気になればいつでもお金を引き出すことができる状態にしておくことが重要です。

「名義預金」を避けるためのポイントは以上ですが、ブログでは書ききれない部分もありますので、生前贈与は必ず専門家に相談してから行うことをお薦めします。

 

2014年6月1日日曜日

生前贈与の落とし穴-「名義預金」(前編)

今日は、「相続に関わるプロなら誰でも知っているけれど、世の中にはほとんど知られていない」大事な話をします。

世間では、「おばあちゃんがかわいい孫の名前で預金口座を作って、将来のためにお金を少しずつ積み立てておく」ということがよくあります。

微笑ましい話ではあるのですが、正しいやり方を知らないと、相続の際に混乱を招く原因になることがありますので、要注意です。

さて、こういう場合にありがちなのが、「おばあちゃんが孫にも知らせず、自分の印鑑を使って口座を作る」というパターンです。

孫が無事成人して、通帳を渡す時が来ればまだ良いのですが、その前におばあちゃんが亡くなった場合、相続との関係でこの預金はどのように取り扱われるのでしょうか?

実は、通帳の中の預金は、おばあちゃんの相続財産の一部となります。当然、相続税の課税の対象にもなります。

ここまで読んできて、「あれっ?」と思った方もいらっしゃるでしょう。世間一般には、「通帳の名義が孫のものだから、預金は孫のものだ」と思う方の方が多いのではないでしょうか。

しかし、本当はそうではないのです。これからその理由を説明します。

もともと、おばあちゃんがお孫さんにお金を贈与したい場合、おばあちゃんとお孫さんの間で贈与契約を締結する必要があります。

贈与契約は、必ずしも書面で行う必要があるわけではありません。しかしながら、両当事者が、最低限、贈与を認識している必要があります(当たり前の話ですが)。

おばあちゃんが孫に黙って口座を作った場合、孫には贈与を受けたという認識がありません。贈与契約は成立しようがないのです。

更に言えば、おばあちゃんは自分で保管している印鑑を使って口座を作っていますから、お金の支配も実質的にはおばあちゃんがしています。

このような他人名義でなされた預金を業界用語で「名義預金」と呼びます。

名義預金は、言って見れば、自分の上着の右のポケットから左のポケットにお金を移し替えているのと同じであり、贈与が成立する余地はありません。

このような状況で、預金を孫のものと考えて相続税の申告対象から外すと、後日、税務署から指摘を受けることになりかねません。

では、贈与契約を成立させるためには、どうすれば良かったのでしょうか。後編に続きます。

【関連する本サイトの記事】
12-2-3 現金と預貯金について