東京西法律事務所

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2014年6月1日日曜日

生前贈与の落とし穴-「名義預金」(前編)

今日は、「相続に関わるプロなら誰でも知っているけれど、世の中にはほとんど知られていない」大事な話をします。

世間では、「おばあちゃんがかわいい孫の名前で預金口座を作って、将来のためにお金を少しずつ積み立てておく」ということがよくあります。

微笑ましい話ではあるのですが、正しいやり方を知らないと、相続の際に混乱を招く原因になることがありますので、要注意です。

さて、こういう場合にありがちなのが、おばあちゃんが孫にも知らせず、自分の印鑑を使って口座を作る」というパターンです。

孫が無事成人して、通帳を渡す時が来ればまだ良いのですが、その前におばあちゃんが亡くなった場合、相続との関係でこの預金はどのように取り扱われるのでしょうか?

実は、通帳の中の預金は、おばあちゃんの相続財産の一部となります。当然、相続税の課税の対象にもなります

ここまで読んできて、「あれっ?」と思った方もいらっしゃるでしょう。世間一般には、「通帳の名義が孫のものだから、預金は孫のものだ」と思う方の方が多いのではないでしょうか。

しかし、本当はそうではないのです。これからその理由を説明します。

もともと、おばあちゃんがお孫さんにお金を贈与したい場合、おばあちゃんとお孫さんの間で贈与契約を締結する必要があります。

贈与契約は、必ずしも書面で行う必要があるわけではありません。しかしながら、両当事者が、最低限、贈与を認識している必要があります(当たり前の話ですが)。

おばあちゃんが孫に黙って口座を作った場合、孫には贈与を受けたという認識がありません。贈与契約は成立しようがないのです。

更に言えば、おばあちゃんは自分で保管している印鑑を使って口座を作っていますから、お金の支配も実質的にはおばあちゃんがしています。

このような他人名義でなされた預金を業界用語で「名義預金」と呼びます。

名義預金は、言って見れば、自分の上着の右のポケットから左のポケットにお金を移し替えているのと同じであり、贈与が成立する余地はありません

このような状況で、預金を孫のものと考えて相続税の申告対象から外すと、後日、税務署から指摘を受けることになりかねません

では、贈与契約を成立させるためには、どうすれば良かったのでしょうか。後編に続きます。

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12-2-3 現金と預貯金について