今日は、相続の際に起きがちな、「兄弟間での不動産の共有」についてお話しします。
親の世代が亡くなって、相続財産を分けるときに、自宅などの不動産を兄弟間で法定相続分に従った共有にすることがあります。
特に、まとまった額の預貯金など、他に分ける財産がない場合に、唯一の財産である不動産(往々にして自宅であることが多い)を兄弟間の共有とすることが見受けられます。
ところが、この「兄弟間での不動産の共有」は、遺産分割の際に避けるべきことの典型例なのです。
その理由は、以下の話を読んでいただくと良くわかります。
【事例】
太郎さんと次郎さんの父、良太郎さんが亡くなったとき、良太郎さんは、2人に相続財産として自宅を残しました。
もともと自宅には太郎さん一家が良太郎さんと一緒に住んでいましたが、太郎さんは自分だけが相続する訳には行かないと考え、次郎さんと話し合いの上、自宅を半分ずつの持分で共有する内容の遺産分割をし、登記も済ませました。
5年後のある日、次郎さんは重病にかかり、治療費がかさむようになりました。
そこで次郎さんは、以前に実家の半分を相続したことを思い出し、太郎さんに「自宅を処分して代金を分けるか、自宅に住み続けるなら太郎さんが持分を買い取ってくれないか」と持ちかけました。
しかし、太郎さんは生活に精一杯で持分を買い取るだけの余裕はありません。また、自宅を売ったら生活の場がなくなってしまいます。太郎さんは次郎さんの申し出をただ断るしかありませんでした。
そこで次郎さんは、やむなく裁判所に「共有物分割の訴え」を提起しました。裁判所は次郎さんの主張を認め、自宅を売却して代金を分割する旨の判決を下し、太郎さんは住処を失ってしまいました。
【事例ここまで】
いかがでしたか。兄弟間で不動産を共有することの恐ろしさがご理解頂けたのではないでしょうか。
唯一の相続財産である不動産を共有すれば、遺産分割の際には丸く収まるのですが、結局は問題の先送りでしかなく、いずれは問題がおきてしまうのです。
仮に何も起きなかったとしても、いずれは訪れる次の世代への相続の際に、更に持ち分が細分化され、複雑化していくことは避けられません。
では、兄弟間での共有を回避するための何か解決方法はあるのでしょうか。後編に続きます。