昨日のエントリー【葬儀費用は誰が負担するのか】の続きのような話ですが、「香典は誰のものか」ということも、知っておいた方が良いでしょう。
こちらは、正解が1つしかありません。
判例上、香典は喪主に対する贈与とされており、これに対する異論は見当たりません。
従って、香典は喪主のものであることは疑いなく、遺産分割を行う必要もありません。
教科書的な話はこれで終わりなのですが、今日はもう少し深く掘り下げて考えてみたいと思います。
仮に、葬儀費用について相続財産から支出した場合も、同じように考えて良いのでしょうか。
もともと、社会通念上、香典は葬儀費用に充てられることが予定されており、香典を喪主への贈与と考えるのも、少なくとも香典として受け取った金額については喪主が葬儀費用を負担することを前提としています。
従って、一方で葬儀費用を相続財産から支出しながら、他方で香典を喪主が独り占めするのは、結論としてバランスが良くないように思われます。
あくまで私見ではありますが、このような場合は、「本来先に香典を葬儀費用に充当すべきでありながら、これをせずに相続財産から葬儀費用を支出したことにより、香典の金額に相当する利得を得たものとして、不当利得が成立し、他の相続人に対する返還義務を負う」という考え方もできるかもしれません。
【関連する本サイトの記事】
9−2−6 香典