東京西法律事務所

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2014年4月30日水曜日

GW特別企画:弁護士選びの秘訣(後編)

いよいよ本企画も最終日となりました。

私の考える良い弁護士を見分けるための面談時のチェック項目」を公開します!相続の相談の場合を想定して書きましたが、意外と普遍性があるかもしれません。

A 質問の技術と面談時間
(評価のポイント)その分野に明るい弁護士ほど、重要な点をわきまえた上で、てきぱきとポイントを押さえた質問をしてくれます。また、最初の相談にはどうしても一定の時間がかかりますので、必要な時間を割いてもらえることも大事です。
a(7点)弁護士が話を積極的にリードし、こちらから話していないことも聞き出してくれた。相談時間をしっかりと取ってもらえた。
b(5点)普通に話が進んだ。相談時間は一応十分であった。
c(3点)弁護士が受け身になってただ聞くだけだった。時間が足りなかったため、話ができなかった。

B 目標と課題の明確性
(評価のポイント)弁護士が今後の見通しを示してくれたか(見通しがつかない理由がある場合でも、その理由が明確であればOK)。また、今後行うべきこと(資料の収拾など)について示してくれたか。
a(7点)弁護士が自ら進んでゴールまでの見通しをはっきりと語ってくれた。また、今後何をすれば良いのか、あるいは弁護士が何をしてくれるのか明確に教えてくれた。
b(5点)ある程度の見通しを教えてくれたが若干表現が曖昧なところがあった。一応何をすれば良いのかは分かった。
c(3点)先の見通しを聞いても最後まではっきりした答えが返って来なかった。今後どうすれば良いのか分からなかった。

C 費用の透明性
(評価のポイント)費用の全体について、はっきりと教えてくれるか。なお、何をするのかがまだ明確でない段階では、弁護士も費用について答えようがないので、必ずしも初回の相談時に費用の話が出るとは限りませんが、委任契約の締結時に説明があれば十分です。
a(7点)わかりやすくかつ具体的な費用の説明があった。
b(5点)一通りの説明があったが、やや抽象的であった。
c(3点)費用について質問したのに、最後まできちんと教えてもらえなかった。

D 態度
(評価のポイント)依頼者に接する態度から垣間みれる「人となり」を判断しましょう。
a(7点)初めて会う人に対する態度として相応しい程度に礼儀正しく、適度な距離感を保っていた。好感が持てる態度だった。
b(5点)よくも悪くもなかった。
c(3点)丁寧語を使用しないなど、偉そうだったり、逆に馴れ馴れしかったりした。

E 相性
(評価のポイント)弁護士と依頼者の間にも相性があります。最後は直感も大事です(笑)。
a(7点)話しやすい弁護士だと感じた。
b(5点)良くも悪くも感じなかったが、普通に信頼関係が築けそうである。
c(3点)最後まで何となくそりが合わなかった。

(採点基準) 35点満点で、平均を25点に設定しています。私だったら、27~29点あれば良しとしますが、どの水準で満足するかは人それぞれでしょう。

以上、読者の皆様の参考になれば幸いです。

(注意事項) 上記は私の個人的意見であり、異なった見地からの意見もありえます。また、いかなる場合であれ、結果については一切責任を負いかねますので、自己責任にてご利用下さい。


2014年4月29日火曜日

GW特別企画:弁護士選びの秘訣(中編)

前編をまだご覧になってない方は、併せてご覧下さい。)

さて、今日は弁護士の「見分け方」についてお伝えします。

出会った弁護士に依頼して良いかどうか、迷ったときのご参考です。

私は、「弁護士はお医者さんに例えて考えると分かりやすい」と思っています。

あなたは、病院に行ったときに、どんなお医者さんに好印象を抱くでしょうか。

「きちんと診察をし、病気についてわかりやすく教えてくれて、丁寧に薬の説明をしてくれる人」ではないでしょうか。

私たちは、「名医」を直接見抜くことはできません。どう調べても、病気の知識について素人がお医者さんを上回ることなどできないからです。

でも、上記のような「真摯に患者さんに接する」お医者さんかどうかならすぐ分かります。

そして、そのような真摯に患者さんに接するお医者さんであれば、病気の治療そのものについても真剣に行ってくれるのではないかと思うのです。

これを弁護士にあてはめると、「依頼者の話をきちんと聞き、依頼者の置かれている状況についてわかりやすく教えてくれて、最終目標とそのために何をすべきかを丁寧に教えてくれる人」が良い弁護士である可能性が高いと思います。

後編では、弁護士への最初の相談後に、依頼を検討する際に利用できるチェックシートを公開します。

2014年4月28日月曜日

GW特別企画:弁護士選びの秘訣(前編)

(当blogが累計500viewに達しました。当ブログは、相続総合情報サイト「わかる相続」から派生しましたが、今や、「わかる相続」本サイトより人気になりつつあります。愛読の皆様にお礼申し上げます。今後ともよろしくお願いします。)

皆さん、ゴールデンウィークはいかがでしょうか?

私は今のところ、休日の目処が立っておりません。

さて今日は、特別企画と題しまして、弁護士に依頼するときの秘訣をあなたに教えます。

最初は、弁護士との「出会い方」についてです。代表的な方法を挙げて、それぞれの長所と短所を比較します。

(1)紹介
一番よくあるのが、知人の方の「ご紹介」です。

実際、私もお客様の半数以上が、ご紹介の方です。

ご紹介の一番良いところは、お互いに安心感があるところですね。

あなたにとって一番良いのは、紹介者の方が顔が広く、複数の弁護士を知っていて、その中から一番適任の人を選んで紹介してくれる場合です。

逆に、1人しか弁護士を知らない人に紹介を頼む場合は、どのような弁護士なのか、先に教えてもらってから紹介を依頼する方が間違いがないと思います。

(2)市区町村の無料相談
ご紹介のルートがない場合、市区町村の役所の無料相談に行くというのが、わりと一般的ですね。

メリットは、多くの場合、最初の30分が無料となっていることです。また、知らない法律事務所に出かけていくより、役所の方が何となく安心であるというのも人気の理由であると思います。

他方で、どのような弁護士が相談を担当するか、事前に分からないというデメリットがあります。もちろん、いい弁護士さんに当たるかもしれませんが、ある意味「くじ運」任せになります。

また、相続についてのご相談は、最初にご家族関係や財産の概要についてお聞きするので、初回はそれなりに時間がかかりますが、30分で終わらせようとするとかなり気忙しくなります。

なお、市区町村の役所での相談の後で、同じ弁護士に相談しようとすると、事務所はその自治体にないこともありますので、その点も注意が必要です。

(3)法テラス
法テラスは、収入に乏しい方が、リーガルサービスを受けられるようにすることを目的として設立されました。

従って、法テラスで扱っている案件は、そういった方々が遭遇する事件(破産等)が多いように見受けられます。

また、担当弁護士を選ぶことができないという点も、市区町村の無料相談と同様です。

(4)インターネット検索
以前は、余りありませんでしたが、最近はインターネットでの弁護士探しも増えてきました。

ホームページを持つ法律事務所は増えていますし、当事務所のお客様の中にも、ホームページを見てご連絡を頂くお客様が相当数いらっしゃいます。

インターネットで弁護士を探す場合は、予め弁護士の得意分野や人となりをある程度理解した上で相談できるという利点があります。

もっとも、ホームページの記載が正確であるとの確証はありません。相談の際に、能力を備えた誠実な弁護士であるかを慎重に見極めることをお薦めします。

以上、敢えて言えば、(1)>(4)≒(2)>(3)の順でおすすめです。
もっとも、これらの差は相対的なものであり、どの方法を選んだとしても、あなたにとって良い弁護士に出会う可能性も、そうでない可能性も、十分にあります。何よりも大事なのは、あなた自身が弁護士を見極める目を持つ事なのです。

中編では、会った弁護士の「見分け方」について触れます。

2014年4月27日日曜日

相続法制検討ワーキングチームが発表されました(法務省)

法務省ホームページで、相続法制ワーキングチームが発表されています。

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900197.html


この検討会は、昨年の最高裁判決を受けて、昨年末に民法900条4項但書を削除した(すなわち、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等にした)際に、「配偶者を保護するため、配偶者の相続分を増やすべきではないか」といった意見が見られたことに対応するものです。
今後の議論の進展が注目されます。

個人的には、20年前に家族法を教わった大村先生(当時はまだ助教授でしたが)が、この分野を代表する学者として座長に就かれたのを懐かしさを込めて拝見しております。

2014年4月25日金曜日

ブログ開設1週間(記事人気ランキング付き)

このブログが誕生してから、早いもので1週間と1日が過ぎました。

早くブログとしての体裁を整えたいという気持ちから、ここまで、8日で16記事というハイペースで更新しております。

おかげさまでこのブログも少しずつ成長し、累計400viewとなりました。

今後は少しゆっくりとなるかもしれませんが、楽しんで書いていくつもりですので、今後とも宜しくお願いします。

さて、ここまでの人気記事は、

1位 養子縁組と相続 17view

2位 間違いさがしに挑戦 16view

3位 限定承認の「使い途」 中編 16view

となっております。

あなたの一番はどれでしょうか?

私は、明治にGo!(前編)が、書いていて一番楽しめました。

実務への役立ち方という意味では、限定承認の「使い途」(後編)が、ノウハウとして貴重なはずですが、人気がないのが不憫です。

それでは。

(22:15追記)
上記のように書いたところ、数時間のうちに明治にGo!(前編)が選外から一気に一位(18view)に躍り出ました。

2014年4月24日木曜日

明治へGo!(後編)

さて、明治に遡る旅を楽しんで頂いた後は、ちょっと真面目に相続と戸籍の関わりについて述べます。

前編では、明治や大正時代の戸籍をご覧頂きましたが、果たして「そんな古い戸籍が一体何の役に立つのか」と疑問に思われたかもしれません。

驚かれるかもしれませんが、これらの戸籍は、相続との関係では、日々、役に立っているのです。

相続と戸籍は切っても切れないほど深い関係にあります。

相続の仕事をしていると、何をするにも戸籍謄本が必要になります。

特に、一番多く戸籍謄本が必要になる場面はというと、兄弟間の相続(遺産分割)です。

意外と多いパターンなのですが、一生独身であったり、結婚してもお子さんのいらっしゃらない方が亡くなると、多くの場合、兄弟姉妹が相続人になります。(通常、上の世代の方は先に亡くなっているからです。)

そのとき必要になるのが、(既に亡くなっている)ご両親それぞれの、「生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本」です。

なぜかと言えば、被相続人の兄弟姉妹の全員を確定するためには、ご両親の一生を調べるしかないからです。

さて、今年90歳で亡くなった方がいらっしゃるとして、そのご両親が生まれたのは、約110年〜120年前になります。

このようにして、あっという間に、明治時代の戸籍が出てきます。

相続の仕事をしていて私が何よりも感心するのは、戸籍の制度を定め、150年近く維持してきた日本人の几帳面さにあります。

おかげで、遥か後の世まで、途切れることのない人の一生分の記録を伝えることができるのです。

世界中で、戸籍制度があるのは日本と、その旧植民地(韓国、台湾)だけと言われています(韓国は後に廃止)。

戸籍は日本が世界に誇れるものの1つかもしれませんね。

あともう1つ。

仕事が終わったときに、お客様から「戸籍謄本(又はコピー)が欲しい」とリクエストを頂くことがよくあります。

もちろん快くお渡しするとともに、謄本を一緒にめくりながら、内容をご説明し、遠い祖先の名前を確認したりしています。

そんなときは、お客様は皆、本当に楽しそうな顔をされます。

戸籍には、人のロマンを掻き立てる何かがあるようです。

おしまい

【関連する本サイトの記事】
13. 戸籍謄本と住民票の取得
4-2-5 兄弟姉妹が法定相続人となるとき

明治へGo!(前編)

今日は、当ブログでは初めて取り上げる、戸籍のお話です。

戸籍制度は、明治5年に始まりました。


時代によって何回も形を変えながら、戸籍制度は現代まで連綿と続いています。

今日は、戸籍を、現代から出発して、遙か明治初期まで遡って眺める旅に出ましょう。

それでは出発です!


1 コンピューター化戸籍

あなたは、ご自分の戸籍がどのような形式になっているか、ご存じですか?



(戸籍サンプルの出典:福岡市)
http://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/kusei/life/kosekidennsannka.html

そう、こんな感じですね。

現代の戸籍は、ほとんどが電算化されています。平成6年の戸籍法改正によって戸籍がコンピューター化されました。

では、その前はどうだったか、覚えていますか?


2 現行戸籍(昭和23年~) 



(戸籍サンプルの出典:一般社団法人部落解放・人権研究所)
http://blhrri.org/info/koza/koza_0138.htm

覚えている方も沢山いると思います。縦書きのタイプ打ちでした。

現在の民法に従った、戦後の戸籍の様式です。

家族制度は、戦後大きく変わりました。戸主制度がなくなったのもその一つです。

戸籍も時代を反映しています。

次は、戦前まで遡ります。


3 大正4年式戸籍



(戸籍サンプルの出典:相続の栞)
http://souzoku.kouekisya.com/3-07.html

大正4年は、今から99年前です。

「戸主」や「前戸主」の欄があります。

ここから先、戸籍は墨で書いてあります。仕事上、この時代の戸籍を拝見する機会も多いのですが、手書きの文字の解読には毎回難儀しています(笑)。



4 明治31年式戸籍




(戸籍サンプルの出典:和み日記)
http://ameblo.jp/wasaisai/entry-11047308511.html

明治31年は、今から116年前です。

上記サンプルをよく見ると「孫」という続柄が見えます。つまり戸主の孫が一緒の戸籍に載っているのです。

この頃の戸籍は本当に大家族で、何ページも続いているものがあります。

明治31年は、旧民法が施行された年です。これによって、戦前の「家」制度ががっちりと固まりました。

私が子供の頃は、明治生まれの方もちらほらいらっしゃいましたが、今は非常に稀となりました。

5 明治19年式



(戸籍サンプルの出典:家系図スタジオ)
http://kakeizu-studio.com/Roots_03_Koseki.html

明治19年は、今から128年前です。

「こんなに昔の戸籍が残ってるなんて!」と驚かれる向きもあろうかと思いますが、明治19年式戸籍が一般に入手可能な最古の戸籍です。

よく見ると、右下に何も書いてない縦長の空白の欄がありますね。

これは何だと思いますか?

昔は、ここに「士族」などと身分が書かれていたのです。

今は塗りつぶされて、見ることは出来ません。

ちなみに、この時代の戸籍を見ると、「嘉永」生まれだとか、「慶応」生まれの人が沢山載っています(!)。

6 明治5年式(壬申戸籍)






(戸籍サンプルの出典:北さん堂雑記)
http://blogs.yahoo.co.jp/kitasan1970/44475281.html

いよいよ、日本最初の戸籍です。

この後の時代のものとは、随分見かけも中身も違います。

この頃は、血縁であろうとなかろうと、同じ所に住んでいる人が同じ戸籍に入っていました。

なお、残念ながら、壬申戸籍は、現在は閲覧することができません。

身分の欄の一部に現代では差別的とされる表現が用いられており、過去に部落差別に悪用されたことがあることから、閲覧ができなくなりました。

7 フィナーレ

150年近く遡った、長い長い戸籍の旅もいよいよ終わりです。

お楽しみ頂けたでしょうか。

さて、後編では、戸籍と相続の関わりについて、簡単に触れます。(だって、「わかる相続」のブログですから、ね。)

2014年4月23日水曜日

長寿の秘訣

相続の仕事をしていると、70代〜80代のシニア層の方とお会いする機会が大変多くなります。

そんなシニア層の方の中に、同世代の方と比べて、飛び抜けてご健康な方がいらっしゃるときがあります。

最近、年齢に関わらずご健康を維持されている方々に、ある共通点があるのに気がつきました。

それは、「退職前から長い期間にわたり、意識的に運動を日常生活の中に取り入れてきた」という点です。

「運動」と言っても激しいスポーツである必要はなく、犬の散歩でアップダウンの多い街を歩いたり、自転車で遠出する、といった程度なのですが、ご健康な方は、体を動かす事への明確な意識付けがなされている点が、平均的な体力の方と比べて顕著なように見受けられます。

私も、出過ぎた自分のお腹をなんとかするために、そろそろゴルフでも始めたいと思います。

2014年4月22日火曜日

限定承認の「使い途」(後編)

3回にわたってお送りする限定承認シリーズの最終回です。

限定承認を行うときに必要な期間について、手続の段階を追って説明します。

(1)申立の準備 1ヶ月半~2ヶ月程度
相続放棄よりも若干準備に時間がかかります。戸籍謄本の取り寄せも行います。

(2)申述の許可の審判、公告 半月程度
裁判所の判断はわりと早く出ます。官報に公告を出す必要があるので、その申込みや原稿のチェック、掲載までの待ち時間があります。

(3)公告期間 2ヶ月
債権者に2ヶ月以内に債権を届出るように公告します。この期間は法律で決まっているので、2ヶ月より短くはなりません。

(4)鑑定人の選任、鑑定 1ヶ月半
先買権を行使する場合は、裁判所に鑑定人を選任してもらう必要があります。
先買権の行使はレアケースなので、裁判所の側でも対応に少し時間がかかり、鑑定人の選任の申立からまで1ヶ月程度要することがあります。
また、鑑定人(例えば不動産鑑定士)にも繁忙期があるため、時期によっては、選任から鑑定人に鑑定してもらうまで、少し時間がかかることがあります。

(5)鑑定 1ヶ月
不動産の場合、鑑定人の鑑定から鑑定書作成まで1ヶ月くらい見ておけばよいでしょう。

(6)配当表の作成、債権者との交渉、債権者の内部決済 1ヶ月半
財産の価格がすべて確定したら、配当表を作成します。

以上の通り、先買権の行使まで含めたフルコース(中編のパターン②)では9ヶ月程度かかります。

これに対し、そもそも債務があるかどうかも分からず、念のために限定承認を行う場合は、早ければ3~4ヶ月程度で終了します。

このように、一口で限定承認と言っても、かかる時間は場合によりけりです。

なお、全体の必要時間を短くするための秘訣は、①裁判所に提出する鑑定人選任申立書を公告期間中に作成する、②債権者に送付する配当表を、鑑定人が鑑定書を作成する間にできるだけ作成しておくなど、手続き上やむを得ず発生する「待ち時間」をうまく利用して、前倒しで作業するところにあります。また、上記のスケジュールで物事を運ぶためには、そのような工夫が欠かせない前提となっております。

また、債権者から異議が唱えられると当然時間がかかるので、(長くなるのでブログには書ききれませんが)事前に債権者の納得を得るための工夫も必要です。

つまり、依頼を受ける弁護士の仕事への取り組む姿勢によっても、必要時間はかなり違って来るのです。

今日はここまで

【関連する本サイトの記事】
7−1−4 相続の限定承認
7−1−6 相続放棄と限定承認の比較

限定承認の「使い途」(中編)

引き続き、限定承認の「使い途」について説明します。

次のような場合には、限定承認には、相続放棄や単純承認にはないメリットがあります。

①潜在債務の相続を回避したい場合

どれだけ調査しても、まだ見つかっていない債務があるかもしれない、という場合があります。

例えば、被相続人(即ち亡くなった方)が、会社経営を行っていた場合、会社の債務を個人として連帯保証していることが良くあります。

しかし、保証債務は、通常は債務として余り意識されておらず、調査してもすぐには見つからないこともあります。

このような場合、相続を単純承認するにはリスクがあり、かといって放棄するのはもったいないため、限定承認が適しています。

②「先買権」を行使したい場合

「先買権」とは、限定承認を行った後、相続財産の中に相続人にとってどうしても手元に残したいもの(例:自宅など)があるときに、相続人が、その財産の価値に見合った金額を支払うことにより、その財産を手に入れることができる権利(一種の優先的購入権)をいいます。

本来、限定承認を選択した場合、相続財産はすべて競売され、代金が債権者への弁済に充てられますが、先買権を行使すれば、手放したくない財産を選んで確保することができます。

先買権は、限定承認だけに認められた制度であり、どうしても確保したい財産がある場合には、限定承認が有力な選択肢となります

なお、たとえ消極財産が積極財産を上回っている(すなわち債務超過)ことが明らかな場合でも、先買権を行使するために限定承認を申し立てることは可能です。

ところで、先買権を行使するためには、裁判所に鑑定人を選任してもらう必要があります。これは、もともと稀な限定承認の中でも更にレアケースで、平成24年の司法統計では、たった76件しか申し立てられておりません。私は、昨年1件を取り扱いましたが、裁判所の担当書記官にも馴染みがなく、当方から参考文献をコピーして送付してあげた思い出があります。

後編では、実際に限定承認を行う際に、どれくらいの期間がかかるかについて書きます。

2014年4月21日月曜日

限定承認の「使い途」(前編)

本日は、知られているようで知られていない制度、「限定承認」について書きます。

といっても、限定承認に関する一通りの説明は「わかる相続」本サイトに譲り、ブログではもう少し奥深いところを書いてみたいと思います。

さて、限定承認は、弁護士なら誰でも知っている割には、実務上は稀にしか用いられません。

平成24年に相続放棄は約17万件もの申立があったのに比べ、限定承認はたった833件に留まっています(司法統計より)。

なぜここまでの差があるかというと、相続放棄と異なり、限定承認は手続の終了までに時間がかかるというデメリットがあり、そのデメリットをあえて甘受してまで限定承認を行う必要性のある場合が少ないからです。

以下、理由を詳しく説明します。

本来、限定承認は、積極財産(プラスの相続財産)と消極財産(マイナスの相続財産)のどちらが大きいか分からない場合に利用することを想定している制度です。

しかし、そのような場合は、慌てて限定承認を行わずとも、熟慮期間の伸長を裁判所に申立て、時間的余裕を持って財産を調査し、単純承認か相続放棄かを選択することも可能です。

だから、積極財産と消極財産のどちらが大きいか分からない場合であっても、必ずしも限定承認を使う必要のない場面が多いのです。

他方で、相続放棄は、裁判所に申立さえすれば良いだけですが、限定承認は、裁判所への申立の後に、相続人が自ら相続財産を換価(つまりお金に換えて)し、債権者への弁済を行う必要があります。

更には、限定承認は、相続人全員で申し立てなければならないという手続上の制約があります。

そんな理由で、限定承認は余り使われていません。

それでは、限定承認は全く利用価値のない制度なのでしょうか?

ところがそうでもないのです。限られてはいますが、限定承認には特別の「使い途」があるのです。

詳しくは、中編に続きます。

金融・商事判例 増刊No.1436「相続判例の分析と展開」

掲題の書籍が発売されています。
相続を巡る最新判例が30件掲載されており、相続を取り扱う法律実務家は必読と思われます。
私も暇を見つけて知識のアップデート中です。


2014年4月20日日曜日

養子縁組と相続

ご存じですか?

普段は余り意識しませんが、世の中に「養子縁組」の数って、意外に多いんですよ。

相続関係の法律相談の際に、お客様から「養子縁組」という言葉が出てくることが結構あります。 ご相談全体の1割強から2割弱程度でしょうか。

ところで、日本で「養子縁組」と言うと、赤の他人との間の養子縁組はほとんどと言って良いほどなく、多くが「血縁関係のある人同士」の縁組です。

なかでも、「祖父母と孫の間の養子縁組」、「叔父・叔母(伯父・伯母)と甥・姪の間の養子縁組」のケースが圧倒的であると思います。

お爺ちゃんとお孫さんが仲良しだったり、次男さんが家の跡継ぎとして子供のいない親戚の養子になる、という話はよく耳にします。

血を分けない間柄での養子縁組は、義理の父母との養子縁組(「入り婿」的な養子縁組)くらいでしょうか。これも、配偶者のお父さん、お母さんとの養子縁組ですから、赤の他人ではありませんね。

さて、養子と相続についてよくご質問を受けるのが、「他家に養子に入っても、実親を相続することはできますか?」というもの。

答えは、Yes.

養子縁組を行っても、実の父母との間の親子関係には、全く影響がありません。
(※普通養子縁組を前提とします)

でも、何となく、養子縁組をすると「他の家に入る」というイメージがあるので、上記のようなご質問を頂くのでしょうね。

養子と相続については、「わかる相続」本サイトで詳しく解説していますので、宜しければご覧下さい。

【関連する本サイトの記事】

4-2-7 被相続人に養子がいるとき



ある偶然


今日は軽い読み物です。

相続にからんでお客様の不動産の売却のお手伝いをしたときの事。

決済の日にお客様から登記済証(権利証)をお預かりし、仲介の不動産会社のオフィスに届けたことがありました。

オフィスに着いたら、最初に登記担当の司法書士さんと名刺交換をしました。白髪の司法書士さんは見るからに大ベテランの風格をお持ちです。

私は椅子に腰掛けると、さっそく鞄から登記済証を取り出して、司法書士さんの目の前に置きました。

そのとき、セピア色に変色した表紙を一瞥した大ベテランの司法書士さんが「あっ、これはうちのだ」と声を挙げました。

20年近く昔に、お客様のお父様が不動産を購入された際、その司法書士さんが登記を担当したため、登記済証の表紙(通常、司法書士さんが作成します)にその方の名前があったのです。

司法書士さんは、しばし瞑目の後、その不動産の購入時に登記を担当した理由を思い出し、語ってくれました。

その当時、お客様のお父様に不動産を売却した会社に、司法書士さんのお兄さんが取締役として務めておられたそうで、お兄さんのご紹介だったそうです。

見ると確かに、登記済み証と一緒に封筒に入っていた古びた書類に、取締役として司法書士さんの名刺と同じ苗字の名前が書かれています。

司法書士さんは、今回は、不動産会社の手配で登記を担当されたので、同じ人が担当になったのは、全くの偶然です。司法書士さんの数が少ない地方ならともかく、東京では奇跡と言っても良いでしょう。

以上、長い時を経て偶然同じ司法書士さんの手に登記済証が戻ったお話でした。

後日、お客様にこの話をお伝えしたところ、お客様も大変驚いていらっしゃいました。私が、「天国でお父様が見て笑っているのではないですか。」と申し上げたところ、お客様も笑顔で「本当よね」とおっしゃっていました。

おしまい

[お断り:この記事は、お客様のプライバシーを保護するため、事実を抽象化し、変更しております。ご了承下さい。]
 

2014年4月19日土曜日

遺言書のデジタル保存について

先日、公式ツイッターアカウント(@wakarusouzoku)でもお知らせしましたが、遺言書のデジタル保存について報道がなされていました。

-----引用ここから-----
東日本大震災の教訓から、公正証書としての「遺言」を、デジタル保存する取り組みが、全国の公証役場で始まった。 
公証人・井内顕策氏は「原本が地震等でなくなってしまっても、保管している電子データを復元すれば、同じものがまた使える」と述べた。 
公正証書遺言は、遺産相続の際に、最も確実なものとして扱われる。
しかし、東日本大震災では、遺言が保存されていた宮城・石巻市の公証役場にも、津波が到達したことから、遺言を災害から守るための対策が必要となっていた。 
このため、日本公証人連合会では、4月から、遺言をスキャナーで読み取り、デジタル保存する取り組みを全国の公証役場で始めた。
-----引用ここまで-----

(引用元)

大震災の津波により、市町村役場で保存されている戸籍謄本が滅失してしまい、更にバックアップデータを保存していた地方法務局までもが津波の被害にあった(データは無事だったようですが)ことがありました。
 
上記報道によると、公証役場にもやはり津波が到達していたようですね。
公正証書遺言は、通常3通作られ、原本は公証役場が、正本は遺言執行者(例えば弁護士)が、謄本は遺言者本人が保管する習わしになっています。
従って、従来の態勢でも3重の保管となるため、災害等には強いはずですが、更に今回のような大規模災害に備えて4重の保管態勢になった模様です。
ところで、報道では「4月から」となっていますが、私の記憶では、昨年の7月頃に作成した遺言書の頃から、杉並公証役場(@荻窪)の公証人はデジタル保存についての説明を始めておられたように思います。地域によって、取り組みの早い所があったのかもしれませんね。
なお、公正証書遺言の保管については「わかる相続」本サイトの「公正証書の作り方」の中でも触れていますのでご覧下さい。

【関連する本サイトの記事】
Q4. 公正証書遺言の作り方


2014年4月17日木曜日

間違い探しに挑戦

遺言書の間違いさがしに挑戦してみませんか。

(わかる相続サイト本体(URL:わかる相続.com)のニュース欄でもご紹介した間違い探しです。ニュース欄よりこちらの方が見やすいかもしれません。)

終わったら答え合わせをしてみて下さいね。答えのうち最初の2つは、下の問題文の右上の欄に書いてあります。残りは、サイト本体のニュース欄をご覧下さい。




【関連する本サイトの記事】
Q5. 自筆証書遺言の作り方

「わかる相続」ができるまで

2014年3月に開設された「わかる相続」は、実は遥か前、2012年8月からサイト開設の準備が始まりました。

ウェブサイトの開設に1年半以上かかるなんて、普通ありませんよね。
どうしてこんなに時間がかかったかって?

それは、「わかる相続」の記事が135項目もあるからなんです。
1ページずつ、原稿を書き、デザイナーさんにhtml化して頂き、確認して修正して。

私自身、まさかこんなに時間がかかるなんて、思ってもみませんでした。
長く時間をかけたからこそ、愛着のあるサイトでもあります。

「わかる相続」は、これからも記事を充実させ、成長していきます。
日本一、詳しく解りやすいサイトを目指して。


ブログ開設しました

このブログは、弁護士と税理士が共同で執筆する相続総合情報サイト「わかる相続」(URL:わかる相続.com)のブログ版として誕生しました。

「わかる相続」のツイッターアカウント(@wakarusouzoku)とも連携しながら、相続の最新情報や、解決事例など役立つ情報を発信します。