東京西法律事務所

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2014年4月21日月曜日

限定承認の「使い途」(前編)

本日は、知られているようで知られていない制度、「限定承認」について書きます。

といっても、限定承認に関する一通りの説明は「わかる相続」本サイトに譲り、ブログではもう少し奥深いところを書いてみたいと思います。

さて、限定承認は、弁護士なら誰でも知っている割には、実務上は稀にしか用いられません。

平成24年に相続放棄は約17万件もの申立があったのに比べ、限定承認はたった833件に留まっています(司法統計より)。

なぜここまでの差があるかというと、相続放棄と異なり、限定承認は手続の終了までに時間がかかるというデメリットがあり、そのデメリットをあえて甘受してまで限定承認を行う必要性のある場合が少ないからです。

以下、理由を詳しく説明します。

本来、限定承認は、積極財産(プラスの相続財産)と消極財産(マイナスの相続財産)のどちらが大きいか分からない場合に利用することを想定している制度です。

しかし、そのような場合は、慌てて限定承認を行わずとも、熟慮期間の伸長を裁判所に申立て、時間的余裕を持って財産を調査し、単純承認か相続放棄かを選択することも可能です。

だから、積極財産と消極財産のどちらが大きいか分からない場合であっても、必ずしも限定承認を使う必要のない場面が多いのです。

他方で、相続放棄は、裁判所に申立さえすれば良いだけですが、限定承認は、裁判所への申立の後に、相続人が自ら相続財産を換価(つまりお金に換えて)し、債権者への弁済を行う必要があります。

更には、限定承認は、相続人全員で申し立てなければならないという手続上の制約があります。

そんな理由で、限定承認は余り使われていません。

それでは、限定承認は全く利用価値のない制度なのでしょうか?

ところがそうでもないのです。限られてはいますが、限定承認には特別の「使い途」があるのです。

詳しくは、中編に続きます。