さて、明治に遡る旅を楽しんで頂いた後は、ちょっと真面目に相続と戸籍の関わりについて述べます。
前編では、明治や大正時代の戸籍をご覧頂きましたが、果たして「そんな古い戸籍が一体何の役に立つのか」と疑問に思われたかもしれません。
驚かれるかもしれませんが、これらの戸籍は、相続との関係では、日々、役に立っているのです。
相続と戸籍は切っても切れないほど深い関係にあります。
相続の仕事をしていると、何をするにも戸籍謄本が必要になります。
特に、一番多く戸籍謄本が必要になる場面はというと、兄弟間の相続(遺産分割)です。
意外と多いパターンなのですが、一生独身であったり、結婚してもお子さんのいらっしゃらない方が亡くなると、多くの場合、兄弟姉妹が相続人になります。(通常、上の世代の方は先に亡くなっているからです。)
そのとき必要になるのが、(既に亡くなっている)ご両親それぞれの、「生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本」です。
なぜかと言えば、被相続人の兄弟姉妹の全員を確定するためには、ご両親の一生を調べるしかないからです。
さて、今年90歳で亡くなった方がいらっしゃるとして、そのご両親が生まれたのは、約110年〜120年前になります。
このようにして、あっという間に、明治時代の戸籍が出てきます。
相続の仕事をしていて私が何よりも感心するのは、戸籍の制度を定め、150年近く維持してきた日本人の几帳面さにあります。
おかげで、遥か後の世まで、途切れることのない人の一生分の記録を伝えることができるのです。
世界中で、戸籍制度があるのは日本と、その旧植民地(韓国、台湾)だけと言われています(韓国は後に廃止)。
戸籍は日本が世界に誇れるものの1つかもしれませんね。
あともう1つ。
仕事が終わったときに、お客様から「戸籍謄本(又はコピー)が欲しい」とリクエストを頂くことがよくあります。
もちろん快くお渡しするとともに、謄本を一緒にめくりながら、内容をご説明し、遠い祖先の名前を確認したりしています。
そんなときは、お客様は皆、本当に楽しそうな顔をされます。
戸籍には、人のロマンを掻き立てる何かがあるようです。
おしまい
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13. 戸籍謄本と住民票の取得
4-2-5 兄弟姉妹が法定相続人となるとき