国民年金は、2ヶ月分まとめて後払いで支払われています。
国民年金を受給していた方が亡くなった場合、国民年金は、亡くなった方の遺族に対して、亡くなった月の分まで支払われます。これを「未支給年金」と呼びます。
それでは、相続人が相続放棄を行った場合、未支給年金を受け取ることができるのでしょうか。
言い換えると、未支給年金を請求する権利は、亡くなった方の相続財産といえるのでしょうか。
結論から言うと、国民年金法に基づく未支給年金請求権は、遺族固有の権利であり、相続財産ではないと考えられます。
この点、最判平成7年11月7日は、未支給年金請求権を受給する資格のある方が死亡した場合(つまり、本来国民年金の受給資格のある方(仮に「Aさん」とします。)に次いで、未支給年金を受給するはずの方(仮に「Bさん」とします。)も亡くなった場合)、未支給年金を受け取る権利について、Bさんの相続財産ではないと判断しています。
また、上記判例は、判断の理由として、国民年金法が相続とは別の見地から未支給年金の受給資格者を直接定めていることを挙げています。
一般に、死亡退職金は、会社の退職金規定により支給対象者が決まっていることを理由に相続財産ではないとされていますが、上記判例の理由付けは、まさにこれと同じような判断を行ったものと考えられます。
また、この理由付けを敷衍すれば、もともと未支給年金請求権自体、上記Aさんの相続財産ではないと考えられるはずです。
なお、税務当局も、上記最高裁判例を引用しつつ、未支給年金請求権への相続税の課税を否定する見解を述べており、未支給年金請求権は相続財産ではないという立場に立っているものと考えられます。