東京西法律事務所

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2017年2月12日日曜日

家裁の扱う事件数、年間100万件突破へ

日経新聞電子版によりますと、全国の家裁が扱う訴訟、家事調停、家事審判が、昨年度、史上初めて年間合計100万件を突破することが確実になったと報じられています。


----以下引用


家裁が扱う調停や審判、初の100万件 16年最多更新 

2017/2/9 13:43
 離婚、相続といった親族間の問題が調停や審判として家庭裁判所に持ち込まれる「家事事件」が増えている。2016年の件数は1949年の統計開始以来、初めて100万件を超えることが確実になった。進む高齢化や裁判を巡る意識の変化が背景にある。
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 最高裁の司法統計によると、16年1~11月に全国の家裁が受けた訴訟や審判、調停などの件数は計93万9992件(速報値)で前年同期を5万件超上回った。月間8万件超のペースで推移しており、年間では最多だった15年(96万9953件)を超えるのは確実だ。
 増加が目立つ案件は相続放棄の手続き。住む予定のない実家などを相続しない人が急増し、15年の申立件数は約18万9千件で30年前の4倍。遺産相続に絡む争いも多く、故人の財産の分け方を決める遺産分割の調停は約1万2千件と10年間で3千件近く増えた。
 離婚に伴う争いも多い。別居中の夫婦が生活費などの負担割合を決める「婚姻費用の分担」の調停や審判は、15年に約2万3千件と10年間で2倍以上に。子供との面会交流を求める調停なども10年前の約5千件から約1万4千件に増えた。専門家は「当事者だけでは解決に至らない場合に裁判所を利用しようと考える人が増えてきている」と市民の意識の変化を指摘する。
引用元URL: http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H6R_Z00C17A2AM1000/
-----引用ここまで

記事によると、一番増加に寄与したのは相続放棄のようですね。

インターネット上の法律相談でも、「親の借金を返したくない」という動機で相続放棄を行う方が結構多いように見受けられます。

昔であれば、親の作った借金をそのまま引き受けて返済していた律儀な人も多かったのかも知れませんが、時代による人々の考え方の変化が反映しているように思われます。

また、記事でも指摘のある通り、利用価値のない地方の不動産(実家)の相続を避ける目的での相続放棄も増えているようで、この点については、以前、私もメディアに記事を書かせていただきました(当ブログにも収録しております)。

遺産分割調停もここ10年間で3000件増加し、1万2000件の大台に乗りました。

当事務所でも、昨年から今年にかけて、片手に収まらない数の遺産分割調停を常に同時並行で取り扱っており、ここ数年、増加の一途を辿っています。

今までは、私だけかとも思っていましたが、世間全体での数の増加も背景にあるのかも知れません。

この調停数の増加も、様々な原因があると思いますが、その1つに、先ほど述べた相続放棄と同じように、世の中の「意識の変化」があるのではないかと思われます。

もともと、相続に関する争いは、相続そのものだけでなく、それまでの親との関わりなど、家族の歴史を背景とすることがよくあります。

また、戦前であれば、長男がすべて相続することが当たり前でしたが、戦後生まれの相続人が増えており、長子相続の伝統が人々の意識の中から消えつつあることも、相続の争いが増えている原因の1つであると思われます。

争いごとはないに越したことはありません。

しかしながら、一度争いごとになった時は、当事者間で泥沼の争いをするよりも、調停で解決した方が、ずっと早く、合理的な解決を得られることが多いです。

ところが、世間では、遺産分割調停を行うと、争いが長引くと思い込んでいる方が多く、私も専門家の1人として、誤解を解消していく必要があると感じています。

遺産分割調停については、また日を改めて詳しく解説したいと思います。

2017年2月3日金曜日

節税目的での養子縁組の有効性について


節税目的での養子縁組の有効性に関する1月31日付の最高裁判決について、弁護士ドットコムニュースさんに私の解説が掲載されましたので、お知らせします。どうぞご覧下さい。

記事URL: https://www.bengo4.com/c_4/n_5654/

タイトル:節税目的の養子縁組「ただちに無効にならず」最高裁初判断…今後、どんな影響がある?


相続税対策で結んだ養子縁組は有効か否か。亡くなった男性が、孫(長男の子ども)と養子縁組を結んだのは「節税目的であり、無効だ」と男性の長女と次女が訴えた裁判で、最高裁は1月31日、目的がもっぱら節税であっても「直ちに無効にならない」と初の判断を示した。

相続人の数を増やして非課税になる控除額を増やす「節税」は、富裕層で活用する人が多いといわれる中、注目される判決だった。裁判所の判断は、こうした現状を追認したとみられる。
相続に詳しい弁護士はこの判決をどうみたのか。また、相続において、養子縁組は、どのように利用されているのだろうか。加藤尚憲弁護士に聞いた。


●そもそも、何が問題なのか


「法律上、有効に養子縁組を行うためには、『(養子)縁組をする意思』が必要とされています(民法802条1号)。この『養子縁組をする意思(縁組意思)』は、次の2つを充たす必要があると考えられています。
(1)養子縁組の届出をする意思
(2)実際に養親子関係を形成する意思
節税目的で養子縁組を行う場合、(2)の意思、すなわち本当に親子になる意思があるのかどうかが問題となります」
加藤弁護士はこのように述べる。

●「節税目的の養子縁組は必ず有効」という判断ではない


今回、最高裁はどのような判断を下したのだろうか。
「最高裁は、『相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得る』として、『専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合』でも、直ちに縁組意思は否定されないものと判断しました。
この判決は、『節税目的の養子縁組は必ず有効だ』と保証しているわけではありません。あくまで、『節税目的が縁組意思と矛盾しない』と言っているに過ぎない点に注意する必要があります。
もっとも、今回の判決が『専ら』節税目的の場合も縁組意思も否定されないと述べる以上、今後は、先ほど述べた(2)『実際に養親子関係を形成する意思』は、かなり抽象的なものであっても許されるという考え方が実務上有力になるのではないでしょうか。
これまでの下級審裁判例では、養子縁組の動機が節税目的かどうかが争われた例もありました。しかし今後は、そのような争点自体が意味を持たなくなったと言えるでしょう」


●養子縁組は意外と多い


一般の人にとって、節税のために「養子縁組」をする発想はあまり持たないように思うが、相続の世界では良くあることなのだろうか。
「法務省の統計によると、ここ数年の間、安定して毎年8万件を超える養子縁組の届出が受理されています。
この数を多いと見るか、少ないと見るかについては、様々な考え方があると思いますが、実際に、相続に関するご相談をお受けしていると、養子縁組の話をお伺いすることは良くあります。
感覚的には、4回から5回のご相談のうち1回程度が、養子縁組をされている方や、そのご親族の方からのご相談ではないでしょうか」



●なぜ養子縁組は行われるのか


今回の裁判は、孫を養子としたケースだったが、一般的には、誰をどのような目的で養子とすることが多いのだろうか?
「日本では、赤の他人との間の養子縁組は比較的稀であると思います。何らかの形で、すでに親戚関係にある方々の間の養子縁組が圧倒的多数を占めています。
特に多いのが、次の3つの立場の方が養子になる場合です。

(1)お孫さん
お祖父さん、お祖母さんがお孫さんを養子にする場合です。養子になる方は、一族の跡取りとして目される方が多いと思われます。相続税との関係では、相続を一代飛ばすメリットがありますが、税制の改正により、現在ではその効果は薄れています。

(2)お嫁さん・お婿さん
世間では、お嫁さんが、お義父さん、お義母さんの身の回りの世話を一生懸命されることは良くあります。しかしながら、お嫁さん自身には相続人の資格はありません。ご主人に先立たれた場合や、相続税や遺留分などに目配りをする場合などに、養子縁組を行うときがあります。

(3)甥御さん・姪御さん
お子さんのいらっしゃらないご夫婦が、後継者としてご兄弟のお子さんを養子に迎える場合です。なお、養子になった方は、実の親御さんとの法律上の親子関係は継続するため、養親と実親の双方の相続人になります。

このように、養子縁組は、一般的に、様々な家庭のご事情や介護への期待などを背景として行われていることをご理解頂ければと思います。逆に、私はこれまで節税だけを目的とした養子縁組が行われたということを耳にしたことはありません。相続税を意識している場合も多いと思いますが、あくまで節税は目的の1つに留まることが一般的なのです」

加藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)